こんにちは。めいげつです。
ふだん日本語で生活している私たち。日頃、特に深く考えずに使っている表現ってありますよね。それがたまに、意味をはき違えて使っていることも(例:「母国語」)。
今回取り上げるのは言語の数を数える時によく使う「〇ヶ国語」という数え方。個人的には強烈な違和感を覚えるのに、なんだか特に深く考えずに使っている人が多いような気がしています。ではこの違和感は何なのか、書いていきます。
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「〇ヶ国語」がおかしい理由
「日本人は英語が話せない」なんて話をよく聞きますが、なんだかんだで外国語を話せる日本人は多いと思います。そういう日本語以外の言語も話せる人を紹介するとき、「〇ヶ国語話ペラペラ」とかいう表現が使われますよね。
かくいう自分も日本語以外の言語をいくつか理解できるので、そういう話題になると「何ヶ国語できるの?」という質問をされます。
ただ、疑問に思ったことありませんか? この「〇ヶ国語」という表現。
それはこの表現が、話せる言語(の数)の話をしているはずなのに、なぜか国(の数)の話をしてしまっているから。
「〇ヶ国語」という表現には「国」という漢字が入っていますよね。つまり言語そのものの数を数えているんじゃなくて、字義的にはその言語が使われている国の数を数えている、と考えるのが正解ですよね。言い方を変えれば「〇ヶ国の言葉」です。
ある言語が一つの国だけの公用語になっていれば、「1ヶ国語」と見なせます(まあ公用語でなくても国民の大半が話しているならいいでしょう)。
たとえば日本語、フィンランド語、カザフ語とか。これらは「1ヶ国語」と考えることができて、この3つのトライリンガルなら「3ヶ国語話せる」といっても納得できます。
じゃあ外国語と聞いてぱっと思いつくような、メジャーな言語はどうでしょう?
大学の第二外国語なんかで学ばれる言語は数ヶ国で公用語になってることが多いですね。英語やフランス語、スペイン語、ドイツ語、ロシア語にとどまらず、中国語(中国とシンガポールで公用語)やイタリア語(イタリア、サンマリノ、スイス等)も。
日本人にとって一番身近な外国語・英語の場合はどうでしょうか。英語を法律で公用語に設定してる国は、なんと56ヶ国もあります(ソース:Wikipedia)。国民の大半が英語のネイティブスピーカーで事実上の公用語になっているアメリカ、イギリス、オーストラリアを加えれば59ヶ国です。
つまり、英語は「59ヶ国語」となります。
このツイートはこういった事実を端的に表しています(1つ国じゃないのが混ざってるけど)。
でも日本人に「英語って何ヶ国語?」って聞いたら、こいつは頭がおかしいのかと言わんばかりの表情で「1ヶ国語でしょ」と言われるかと思います。
「ヶ国」という言葉が入っているから明らかに「国の数」の話になるはずなのに、なぜか「言語の数」の話になっている。それが「おかしい」と感じる今日この頃です。
逆に言えば、先ほどの日本語、フィンランド語、カザフ語のように言語が1ヶ国だけの公用語になっている場合はおかしくないわけです。ただ、日常会話において「〇ヶ国語」を使う場合はたいてい複数ヶ国で公用語になっている言語が関わっているので、「おかしいな」と感じるわけです。
もちろん何をもって「言語」とするのかについては様々な意見がありますが、今回ではその議論は取り上げません。
なぜ「〇ヶ国語」って言ってしまうのか?
ここからはただの憶測にすぎませんが、考えられる理由は3つかなと。
- まずは日本語は助数詞を好んで使う言語である
- 我らが母語&母国語である日本語は、国としては日本だけが公用語としている
- 日本語で、「ヶ国語」その他に代わる便利な単語がない
「『我らが母語&母国語である日本語』が日本に住む人全員に当てはまる訳じゃない」という批判はどうかご容赦下さい。
1:日本語は数詞を直接名詞にくっつけるのを嫌う言語ですよね。いつもそうだとは限らないけど、大体の場合において助数詞を使います。
- 家を数えるのも「1家、2家」でなく「1軒、2軒」
- 犬を数えるのも「1犬、2犬」でなく「1匹、2匹」
- 人を数えるのも、使う漢字は同じだけど「1人(ひとり)、2人(ふたり)」と違う読み方をする。
- 神様は「1神様、2神様」でなく「1柱、2柱」
もちろん「1都6県」「蛙ぴょこぴょこ3ぴょこぴょこ」のような助数詞を使わない例外もあります。
ただ一般名詞に関してはこんな風なんで、「言語」を数えるのにも、何か助数詞が必要になったんじゃないかなと。
2:そこで自分たちの母語・日本語が日本という国の公用語になっているものだから、言語と国が結びついて「ヶ国語」という言葉が生まれて広く使われるようになった。
日本人にとって言語や民族の境目は国境と一致しているから、この考えはすんなり受け入れられたと。まあ推測ですけれども。
それで3の「代わりの単語がない」問題が浮上してきますね。上で挙げたような「助数詞」の例を見る限り、数えたい名詞そのものが助数詞として使われる例はないか、あっても非常に少ないんでしょう(たぶん「ひと~」と数えるのが例外なのかも)。
なので「言語」がそのまま助数詞として使われるのに抵抗があるのかも知れません。
正確さを期すなら「〇〇言語」「〇〇の言語」と「言語」をそのまま使った翻訳調の表現しかありません。これだとちょっとカタくて日常会話には適さないような響きがありますね。英語なら、「1 language、2 languages」と言えるので違和感はないのですが。
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じゃあ代わりにどう言えば?
僕はサイト右側の「筆者プロフィール」のところにも書いている通り「〇〇言語」を使うようにしています。私は4言語話せます、みたいに。
なんか翻訳調でカタい表現だし、多少こそばゆいような感じはあるんですが、しょうがないと思ってます。自分は「〇ヶ国語」という表現に違和感を抱くようになってからのこと、ずっと「〇言語」を使ってきたので慣れてきた感はありますが。
それに「1語」となると別の意味になってしまいますね。これは「単語の数」を数える単語なので。
どこかの天才的な言語感覚を持った人が、この「純粋に言語を数えるのに使える」しっくりくる表現を思いついてくれるのを待ってます。凡庸な僕は今のところ思いつきそうにないので。
まとめ
いかがでしたでしょうか。今回は「『〇ヶ国語』って表現おかしくね」という話をしました。
ヨーロッパの言語を学んでいるとこの種の違和感は起こりにくいので、日本語ってつくづく面白い言語だなと思ってしまいます。
もしかしたら、ヨーロッパの国々が地続きで他の言語と接触せざるを得なかったため、ヨーロッパの言語ではこういう問題がないのかもしれません。たぶん違うと思うけど。
異論などはコメント欄にてどうぞ。
Ichigo121212 / Pixabay
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