海外の大学に(交換)留学するとき、全員がほぼ例外なく直面するのが、大学の諸制度の違いによる混乱。それは科目登録の方法だったり、単位制度だったり、さらにはキャンパスの場所だったり。
ヨーロッパでの留学を考えている人、あるいはヨーロッパへの留学が決まった人は、「ECTS」という単語に出くわすことがあると思います。
欧州の大学で勉強するにあたって、ECTSは絶対おさえておきたいポイントの1つ。では、ECTSとは一体何なのでしょう。
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ヨーロッパの大学の共通単位制度ECTSとは?
ECTS(European Credit Transfer and Accumulation System、ヨーロッパ単位互換評価制度)とは、ヨーロッパ各国で共通に用いられる大学の単位制度。いってしまえばヨーロッパの様々な大学でも使われている単位の単位ということ。
大学生が、とある科目をとれば単位がいくつとれるとか言いますが、その「単位」のことです。それがヨーロッパの多くの国々で同じ単位が用いられているということ。
ちょうど日本の大学で1単位、2単位というように、1ECTS、2ECTSという風に数えます。
例えばフランスの大学に通う学生で、フィンランドの大学に留学し現地で60ECTS分の学習をした場合、帰国後フランスの大学に60ECTSをそのまま算入できるというわけです。非常に合理的な仕組みだと思います。
ただ1ECTSのを満たす基準には国ごとに違いがあるのですが、これについては次の項目にて説明します。
ECTSは、ヨーロッパ各国の高等教育のレベルを一定のものとするボローニャ・プロセスの中核をなすもの。ヨーロッパの高等教育の制度を共通化することで、欧州の一大教育圏を作り上げようしています。
ボローニャ・プロセスは、1992年にイタリアのボローニャ大学(ヨーロッパ最古の大学です)で提案されたことからこの名前になりました。
ボローニャ・プロセスとは、高等教育における学位認定の質と水準を国が違っても同レベルのものとして扱うことができるように整備するのを目的として、ヨーロッパ諸国の間で実施された一連の行政会合および合意のことである。ボローニャ協定、およびリスボン認証条約により、このプロセスはヨーロッパ高等教育圏を作り出すことになった。
高等教育を学士3年修士2年の制度に均一化し、ECTSという共通の単位制度をもうけたことで、ヨーロッパの大学間の行き来が容易になり、国境を越えた交流をより円滑になりました。
事実、交換留学制度・エラスムス計画(ERASMUS)の存在も相まって、ヨーロッパの大学同士の交流は非常に活発になっていると言えます。僕が留学していたヘルシンキ大学にも、エラスムスを利用して半年~1年間滞在していた留学生が多くいました。
ボローニャ・プロセスにはヨーロッパのほとんどの国のほか、ロシア、トルコ、カザフスタン、そしてジョージアなどのコーカサス諸国等も参加しています。
この「ヨーロッパ高等教育圏」という1つの高等教育機関のネットワークを作るにあたり、大学で取得した単位を普遍化できるECTSは非常に重要な役目をもっています。
国が違うとはいえ各大学ごとに単位制度が全く違っていたら、ややこしいに決まっています。少なくとも、大学間の国境を越えた交流はもっと難しかったに違いありません。
1ECTSはどれくらい?
各科目ごとのECTSの単位数は、おもに学習時間を基準に決められます。この点では日本の大学の単位制度と考え方は変わらないでしょう。
ヨーロッパ内の普遍的な学業の基準として機能させるためには、各国各大学で異なる基準を使っていてはいけないので、科目ごとに必要な学習時間という共通の基準をもうける必要があるのですね。
とはいっても現実には、何時間の学習で1ECTSになるかは国によって異なっています。
たとえば、ハンガリーでは、エトヴェシュ・ロラーンド大学のように1ECTSを獲得するのに平均して30時間の学習が必要とされます。僕が留学したヘルシンキ大学を含むフィンランドでは、1ECTSは27時間の学習に相当するとされています。
国や大学によって様々ですが、だいたい1ECTSあたり25~30時間の勉強が必要のようです。もちろん個人差もありますので、あくまで目安ではありますが(得意な科目なら少ない勉強時間でも履修できますし)。
そういった差異に関係なく、ヨーロッパの大学では基本的に1年間(2学期間)で60ECTS分の科目を履修することが推奨されています。ヨーロッパの大学(学部、学士課程)は3年なので180ECTS、修士課程なら2年が多いので120ECTSですね。
1ECTSを30時間の学習に相当すると考えると、1年間で1,800時間、学士過程を修了するのに5,400時間分の学習が必要ということになります。365日間1日も休まずに勉強したとして、単純計算で1日あたり5時間勉強しなければならないわけですね。
そこで長期休暇などの休日の存在を加味すれば、1日あたりの勉強時間は相当なものになるはずです。ここにも欧州の学生がよく勉強するということが見てとれます。
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1科目のECTS数&帰国後の単位換算の具体例
最後に、日本の大学の単位への換算について。
「ECTSと日本の単位数は2:1」とも言われますが、僕は正直あまりアテにならないと思っています。
いちおう具体例として、僕が留学したヘルシンキ大学での話を致します。留学先や派遣する大学が異なる方は参考程度にとどめてください。
先に述べた通り、ヘルシンキ大学では1ECTS=約27時間とされています。そして1つの科目で何ECTSとれるかは、科目の種類や授業の総時間によって異なります。
基本的に週1回の授業で5ECTSという科目が多いですが、週2回でも5ECTSだったり、週3回で15ECTSのものがあったり。それ以外にも、外国語科目だと単位数が少なかったりします。
以下、僕が実際にとった科目や、科目登録に使うサイトWebOodiからいくつか例を出しておきます。学部は主に人文科学部で、1学期ごとの単位数です。一応ヘルシンキ大学には独自の単位制度がありますが、以下はECTS換算したものです。
- フィンランド語(週1回、交換留学生向け)……5ECTS
- フィンランド語(週1回、正規学生向け)……6ECTS
- フランス語インテンシブコース(週2回)……5ECTS
- スウェーデン語入門(週1回)……3ECTS
- 中国語(週3回)……15ECTS
- フィンランドの歴史入門、フィンランドの教育入門(各週1回)……各5ECTS
- ウクライナ入門(週2回)……5ECTS
- 日本語授業アシスタント(不定期、週2~3回)……3ECTS
(日本語授業アシスタントの詳細については、海外の大学留学中に日本語ボランティアをやるべき理由【英語の勉強もいいけど】をご覧ください)
ヘルシンキ大学での成績は、1から5の5段階でつけられるか、テストのみの科目の場合は合格/不合格(Passed/Failed)がつけられます。
しかし、これはあくまでヘルシンキ大学の例。デンマークのコペンハーゲン大学(University of Copenhagen)に留学した友人によると、週2~3コマのみで30ECTSほどとれてしまうという、僕からすればトンデモな制度だったそう。
一方、エストニアのタルトゥ大学(University of Tartu)に留学した友人の話では、ヘルシンキ大学とさして差異はなかったみたいです。とりわけ交換留学生にとっては、各大学ごとの制度の違いが出やすいのかもしれません。
ちなみに帰国後の単位換算については、ECTSが学習時間を基準としているため、何ECTSが何単位になるかは正直場合によります。
僕は留学先で46ECTSしか取得しできなかったのですが(少なっ)、日本での大学の単位に変換した結果、1年間にとれる最大単位数の85%程度を取得できました。
(……僕が留学先での単位数が少なかったのは、ちゃんと30ECTS分授業をとっても、興味関心や専門分野に合わずにドロップしたケースが多かったからなのですが)
留学終了後の単位の換算については、計算方式など大学ごとに制度が異なると思うので、それぞれ大学で確認してください。
まとめ:ヨーロッパの大学に行くなら、ECTSについて知っておこう
ECTSは、ヨーロッパ各国の大学が採用している共通の単位。ヨーロッパでの共通の単位を導入することによって、大学間の移動がスムーズにできるようにしたもの。
ヨーロッパ統合の思想は、高等教育にまで広がっていたのですね。
留学先がヨーロッパでないにしても、現地では必ず日本とは違ったシステムがあります。現地でその都度解決していくのもいいですが、事前にリサーチできるものはとことんリサーチしてから行きましょう。情報を制するもの留学を制す、です。
筆者の留学先
大学名 | ヘルシンキ大学(Helsingin yliopisto/Helsingfors universitet) |
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国 | フィンランド・ヘルシンキ |
住所 | Yliopistonkatu 3, 00014, Helsinki, Finland |
公式サイト等 | https://www.helsinki.fi/en(公式サイト) https://www.facebook.com/HelsinkiUniversity(Facebook) |
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Header Image by fritsdejong / Pixabay
めむ
こんにちは。来年秋からヘルシンキ大学に留学しようと思っている者です。とる授業を決めている最中だったのですが、どの授業がどのくらいの単位なのか分からずとても困っていたのでこの記事に出会えて本当に嬉しかったです!すごく助かりました。ありがとうございます!
ほかにも色々ヘルシンキ大学、フィンランドについての記事があるようなので参考にさせていただきます!
めいげつ
めむ様
コメントありがとうございます!
こちらの記事がお役に立てたようで幸いです。
来年秋開始となると学内選考までまだ時間がある時期でしょうか。留学のための情報収集はもちろん、大学での成績なども重要になってくると思いますので、留学に向け頑張ってください! まだコンテンツの少ないブログですが、当ブログの記事がお役に立てれば幸いです!
めむ
めいげつ様
返信ありがとうございます。
はい!頑張ります!