こんにちは。めいげつです。

近年人気の旅行先となってきた、日本から一番近いヨーロッパ・フィンランド。

しかしフィンランドは日本人にとってまだマイナーのようで、フィンランドの公用語に関しては知らない人が多いのが現状。

ここでは、旅行者には心配の種である英語の通用度を含めた、フィンランドのマルチリンガリズム(多言語併用)のお話をします。

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フィンランドの公用語はフィンランド語とスウェーデン語

ヌークシオ国立公園の看板
ヌークシオ国立公園にもフィンランド語名とスウェーデン語名がある

「フィンランドの公用語は何語か?」という質問に答えられる日本人はあまりいないかと思います。

フィンランドの公用語はフィンランド語とスウェーデン語です。そう、フィンランドはバイリンガル国家なのです。

両言語はフィンランド語でsuomi(スオミ)とruotsi(ルオッツィ)、スウェーデン語でfinska(フィンスカ)とsvenska(スヴェンスカ)といいます。

統計によると、フィンランド国内ではフィンランド語母語話者が87.6%(約483.3万人)で圧倒的多数、スウェーデン語話者は次いで多い5.2%(約28.7万人)です(2018年の情報)。

フィンランドではフィンランド語とスウェーデン語が国家語であり、同等の権利をもつことが憲法で保障されています。なので特にフィンランド語とスウェーデン語併用地域では、道路標示などで両言語でのバイリンガル表記がなされています。

道路標示一つとっても、どちらかの言語の話者が不利になってはいけないということですね。

フィンランド語とスウェーデン語の両言語が公用語の自治体は、南西部と東部の沿岸地域に集中しています。首都ヘルシンキ(Helsinki/Helsingfors)もフィンランド語とスウェーデン語が公用語ですし、ほかにはエスポー(Espoo/Esbo)、ヴァンター(Vantaa/Vanda)、ポルヴォー(Porvoo/Borgå)やトゥルク(Turku/Åbo)といった自治体が両言語を公用語にしています。

ポルヴォーのとある道
ポルヴォーのとある道。途中で切れていますが看板が二言語表記になっている

基本的にフィンランドではフィンランド語話者がマジョリティであるため、二言語を併用している自治体でもフィンランド語話者が多い場合がほとんど。

しかし一部では、スウェーデン語母語話者の方が多い自治体も存在します。

たとえばフィンランド中西部にあるヤコブスタード(Jakobstad、フィンランド語名Pietarsaari)や南部のラーセボリ(Raseborg、フィンランド語名Raasepori)は、今でもスウェーデン語が優勢な地域です。

ちなみに日本ではもはや国民的キャラクターであるムーミンの作者トーベ・ヤンソン(Tove Jansson)はスウェーデン語を母語するフィンランド人です。ムーミンの原作は基本的に彼女の母語であるスウェーデン語で書かれています。

フィンランド語ってどんな言語?

フィンランド語と聞いても、正直ピンとこない人が多いかもしれません。フィンランドは北欧の国なので、「スウェーデンとかロシアの言語と関係がありそう」と思う人が多くても無理ないところです。

ですが実際は、フィンランド語は「ウラル語族」とよばれる言語グループの言語でして、ヨーロッパの大半の言語=インド・ヨーロッパ語とは全く違う祖先をもつ、かなり異質な言語です。もちろん、スウェーデン語とは全く違います。

メジャーなヨーロッパ言語とは発音から語彙、文法構造も全く異なるので、その難しさから「悪魔の言語」と不名誉な呼び名でも呼ばれることもあります。

ではフィンランド語はどんな感じの言語なのでしょう? ちょっと覗き見してみましょう。まずは基礎的なフレーズを。

  • Moi/Terve/Hyvää päivää……「こんにちは」
  • Mitä kuuluu/Miten menee?……「調子はどうですか」
  • Minä puhun suomea ja englantia.……「私はフィンランド語と英語が話せます」
  • Pääseekö tällä bussilla Kauppatorille?……「このバスはマーケット広場まで行きますか」

発音はローマ字読みで大体OKです。

では今度は他の北欧語と比べで観ましょう。テキストはEUの公式サイトら拝借したもので、表現や文法の違いはあれど書いてある内容はおおむね同じです。

まずはスウェーデン語から。

Europa är en kontinent med många olika traditioner och språk, men också med gemensamma värderingar. EU försvarar dessa värderingar. EU främjar samarbete mellan de europeiska folken, ett samarbete som tar hänsyn till mångfalden, och strävar efter att besluten fattas så nära medborgarna som möjligt.

EU languages | European union より引用

続いてはデンマーク語。

Europa er et kontinent med mange forskellige traditioner og sprog, men også med fælles værdier. EU forsvarer disse værdier. EU fremmer samarbejdet mellem de europæiske folk ved at stræbe efter enighed, samtidig med at mangfoldigheden bevares, og at beslutninger træffes så tæt på borgerne som muligt.

EU LANGUAGES | EUROPEAN UNION より引用

アルファベットや使われている単語、文の構造等が違いますが、「けっこう似ているな」と思うのでなないでしょうか。ではフィンランド語を見ていきましょう。

Eurooppa on manner, jolla on monenlaisia perinteitä ja kieliä, mutta myös yhteisiä arvoja, joita EU haluaa puolustaa. Euroopan unioni edistää yhteistyötä Euroopan kansojen välillä ja huolehtii siitä, että päätökset tehdään mahdollisimman lähellä kansalaisia – yhdessä mutta säilyttäen Euroopan kansojen monimuotoisuuden.

EU LANGUAGES | EUROPEAN UNION より引用

どうでしょうか。「何だこれ」って思いませんでしたか。上で紹介したスウェーデン語、デンマーク語のどちらとも全く異なるのが見て取れるかと思います。

北欧諸国と地理的に近い関係にあるフィンランド(フィンランドも北欧ですが)でも、言語は全く異なるのです。

なぜスウェーデン語も公用語なの?

ではなぜフィンランドではフィンランド語だけでなく、スウェーデン語も公用語になっているのか?

それは11世紀から1809年まで、フィンランドがスウェーデンの一部だったから。その800年間で、スウェーデン語は当時のフィンランド地域の社会や文化の隅々まで浸透したわけです。

当時の上流階級はスウェーデン語を使っていたし、教育でもスウェーデン語あるいはラテン語が使われていたんです。

その後は1917年の独立までロシア帝国に支配されて今したが、ロシア語はほとんど浸透しませんでした。

こういった歴史的な理由からフィンランド語とスウェーデン語の2言語が国の公用語であるため、フィンランドの国民は義務教育で必ず両言語を学習します。大学の試験にも、「母語」という選択科目として存在します。

まあさすがにスウェーデン語系フィンランド人がスウェーデンに帰属意識をもつ人はほぼないようです。19世紀にフィンランドのナショナリズムを牽引した人々がスウェーデン語系フィンランド人であったことが、その証左といえるでしょう。

スウェーデン語のみが公用語の場所もある!

フィンランド国内のスウェーデン語話者は、南部と南西部のバルト海(フィンランド湾とボスニア湾)沿岸地域とオーランド諸島に集中しています。

国としてはバイリンガリズム(二言語併用)を採用しているフィンランド。しかし市長村レベルになると、少し事情が異なります。

マリエハムンの道路標示
オーランド諸島の表示はスウェーデン語のみで書かれている

まず言及すべきはオーランド諸島でしょう。フィンランドとスウェーデンの間に浮かぶ群島・オーランド諸島は、スウェーデン語だけを公用語するフィンランド唯一の地域です。

かつてはフィンランド本土にも、スウェーデン語だけが公用語の地域がありました。

しかし2014年にコルスネス(Korsnäsフィン語名無し)とラルスモ(Larsmo、フィン語名Luoto)という2つの自治体がフィンランド語も公用語に追加しバイリンガルになり、2016年にはフィンランド本土最後のスウェーデン語単一言語地域だったナルペス(Närpes, Närpiö)がバイリンガルになったことで、フィンランド本土からスウェーデン語単一の地域はなくなりました

というわけで、現在フィンランド国内で唯一スウェーデン語のみが公用語の地域はオーランド諸島だけ。国としては2つの言語が公用語となっていても、市町村レベルではそうではないこともあるのですね。

「オーランド通り」と書かれた道路の表示
「オーランド通り(Ålandsvägen)」と書かれた道路の表示

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内陸部ではフィンランド語のみが公用語ところも

サンタクロース村の入り口。スウェーデン語表記がない
サンタクロース村の入り口。スウェーデン語表記がない

フィンランドは、フィンランド語とスウェーデン語が公用語のバイリンガル国家。ただ、市町村レベルで事情が異なるのは前項で書いた通り。

圧倒的少数のスウェーデン語のみ公用語である地域があるとなれば、当然フィンランド語のみが公用語の地域も存在します。

スウェーデン語話者は基本的に都市部や沿岸地域そしてオーランド諸島に集中していて、内陸部にはスウェーデン語話者はごく少数。なので内陸部の自治体には、フィンランド語モノリンガルのところが多いですね。

サヴォンリンナの博物館前の看板。スウェーデン語が書かれていない
サヴォンリンナの博物館前の看板。写真が悪いですが、看板にはスウェーデン語が書かれていません。

代表的なフィンランド語モノリンガル都市は、タンペレ(Tampere、スウェーデン語名Tammerfors)、ユヴァスキュラ(Jyväskylä)、サヴォンリンナ(Savonlinna)、ロヴァニエミ(Rovaniemi)など。

こういった地域でもしスウェーデン語話者が住んでいた場合は不利を被りフィンランド憲法に抵触しそうですが、その辺りはどうなっているのでしょうね。

フィンランド語+サーミ語が公用語のケース(スウェーデン語がない)

スカンジナヴィア北部には、EU唯一の先住民と呼ばれるサーミ人が住んでいます。

フィンランドにも数千人のサーミ人が住んでいるとされ、彼らの多くは北部のラップランド地方(ラッピ県)に集中しています。

さらにこういった地域ではスウェーデン語話者が少ないこともあり、ラップランド地方の自治体はフィンランド語とサーミ語が公用語となっているのです。

「サーミ語」と一口に言ってもいくつか種類があるので、地域によって公用語は異なりますが。

例えば、ラップランドにあるフィンランド最大の自治体イナリ(Inari)市は、フィンランド語、北部サーミ語、イナリ・サーミ語、スコルト・サーミ語の4つの言語が公用語になっています。

バイリンガルを軽く通り越してクワドリリンガル(四言語併用)ですね。

イヴァロ空港の入り口の写真
イヴァロ空港。入り口にはフィンランド語・英語・サーミ語の3言語で「入り口」と書かれている

僕がイナリにあるイヴァロ空港に行ったとき、アンケート用紙にフィンランド語とサーミ語の表記のみで、スウェーデン語表記がなかったことに驚いた記憶があります。

上の写真では、フィンランド語(おそらくSisään)、英語(Entrance)、サーミ語(Siisa)で「入り口」と書かれていますね。どのサーミ語なのかは分かりませんが、おそらく多数派の北部サーミ語かと。

参考までにイナリ市のホームページは、以上の4言語にプラスして英語、スウェーデン語、ロシア語の7言語で書かれています。これは運営するのが大変そう。

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もはや第3の公用語? 英語が広く通じるフィンランド

英語はフィンランドの公用語ではありません。が、フィンランドには英語が流暢な人が非常に多いです。

Education Firstという会社の英語力指数でも、フィンランドは他の北部ヨーロッパの国々と並んで世界のトップクラス。TOEFLでも高いスコアをとっていますね

バスやトラムの運転手は微妙な場合が多いですが、博物館のスタッフ、カフェ店員、それからスーパーのレジの人でもかなり英語を上手に操る人がたくさんいます。観光で1週間そこら滞在するくらいなら、英語ができれば苦労はしないでしょう。

それに若い人であればあるほど、英語が上手な人が多いです。大学生ならほぼ100%と言っても申し分ないかと思われます。フィンランド語訛りが強い人もいますが、コミュニケーションに支障はないでしょう。

なぜフィンランドの人は英語を流ちょうに話せるのでしょうか。学校によっても異なりますが、フィンランドでは小学3年生あたりから英語教育がなされます。

学校で英語の授業が始まる前でも、そもそもエンターテイメントの少ないフィンランドではイギリスやアメリカなどの映画が多く観られていて、多くはフィンランド語に吹き替えがなく英語の音声そのままで観るそうです。そのため英語の音声に耳が慣れるのだとか(フィンランド人の友人談)。

英語だけにとどまらず、フィンランド人は英語以外の言語も学んでいる場合が多いですね。学校教育では最大5つも言語を学べるようになっていて、フィンランドの外国語への関心の高さをうかがえます。

それもそのはず、フィンランド語はフィンランド国内の500万人ほどに使われる小言語だから。なので必然的に国外のマーケットを意識せざるを得ず、それが英語を学習するインセンティブになっていると思われます。

フィンランド語とスウェーデン語の話者人口をあわせても、せいぜい1500万人くらいですからね。

こういった事情でフィンランドの若い人、都市部や観光地に住む人には英語を話せる人が多いわけです。ヘルシンキで生活していてもフィンランド語が話せない人もいるほど(カフェを経営してるイタリア系のおっちゃんとかね)。

……と英語だけでも十分やっていけそうなフィンランドですが、海外旅行で現地語を覚えないというのもどうかと思うので、まあフィンランド語で挨拶やフレーズをいくつか覚えて行くと良いかと思います。

まとめ:意外とたくさんあるフィンランドの公用語

以上、フィンランドの複雑な公用語事情をお話ししました。

フィンランドはバイリンガル国家と呼ばれますが、その内情は割と複雑。それに近年はフィンランド国外からの移民も増えているので、これからフィンランドの言語の多様性はますます大きくなっていくでしょう。

現在公用語以外の言語で大きいのはエストニア語とロシア語の話者。近年ではソマリ語やアラビア語の話者も増えています。

こうした人たちが増えると、いずれ彼らへの待遇も変わっていくのでしょうね。