近年日本でも人気の旅行先となってきた北欧の国フィンランド。国内最大の都市ヘルシンキ、ヘルシンキからバスで1時間でいける可愛い古都ポルヴォー、ムーミン博物館のあるタンペレ、オーロラ観光の拠点でありサンタクロース村があるロヴァニエミなどなど……。

最近ではマリメッコやイーッタラなどに代表される北欧デザイン雑貨屋さんを目当てに訪れる方も多くみられますね。フィンランドは大好きな国なので、ファンが増えてくれるのはとても嬉しいです。

まあフィンランド観光がメインでなくとも、日本や韓国など東アジア方面からヨーロッパを訪れる人々の玄関口にもなっているので、その乗り継ぎのついでに観光していく方も多いようです。

ただ、上で挙げた観光地以外にも一つ、個人的にすごくおすすめなのにあまり知られていない場所があるんです。

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それは、オーランド諸島! バルト海の上、スウェーデンとと間に浮かぶ群島です。Googleで旅行記を探しても片手で数えるほどしかないほどマイナーな場所のようです。こんなに魅力たっぷりなのにもったいない! この記事ではオーランド諸島の魅力を簡潔に紹介したいと思います!

(写真は特に明記されていない限り筆者が撮影したものです)

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オーランド諸島ってどんなところ?

オーランド諸島の旗 / The flag of Åland islands
オーランド諸島の国旗は、スウェーデンの国旗のパターンにフィンランドの国章である赤をあしらったもの OpenClipart-Vectors / Pixabay

オーランド諸島(Åland Islands)はバルト海に浮かぶ2万6千もの島々からなる群島で、フィンランドとスウェーデンのちょうど間にあります。人口は3万人弱。面積は長野県よりほんの少し小さいくらい。

フィンランド領なのですが、スウェーデン語のみが公用語という、フィンランドでも唯一の地域(フィンランド本土では2016年になくなりました)。よって、住民のほとんどはスウェーデン語を話します。

ただ僕はスウェーデン語ができないので主に英語を使いましたが、ホテルの人にも、博物館の人にもレストランの人にも問題なく英語が通じました。

フィンランド語ではアハヴェナンマー(Ahvenanmaa)といいます。スウェーデン語ではそのままオーランド(Åland)、英語でもスウェーデン語の名前が使われます(Åland Island)。ちなみにAの上には小さな輪っかがついていて、これで「オー」という発音になります(ついてないとアーランドになってしまいます)。

オーランド諸島はその地理的な位置から、古くからバルト海の海上貿易の中継地点として重要な意味を持っていた場所。ただし首都マリエハムン(Mariehamn)は比較的新しく、設立は1861年とのこと。

あの新渡戸稲造が深く関わった、フィンランドの特別な場所

オーランド諸島がフィンランドの特別の場所たらしめているのは、なにも言語だけではありません。

政治的にも、オーランド諸島はフィンランドに属するものの大幅な自治を認められており(外交と軍事を除く)、オーランド諸島独自の議会があります。それにインターネットのドメインがあり(.ax)、独自のÅlcomというプロバイダー・携帯会社もあります。

そのため、僕がフィンランド本土で買ったsimカードElisa Saunalahtiは使えませんでした。これには驚きましたね。だってフィンランド国内なのにフィンランド本土のsimが使えないんですよ。それだけオーランド諸島は特殊な場所なのです。

オーランド諸島は今でこそフィンランドに属していますが、住民のほとんどがスウェーデン語話者ということもあり、1917年にフィンランドが独立した時はスウェーデンとフィンランドがこの群島の領有権を巡って争いました

そこに国際連盟の仲裁が入り、争いはオーランド諸島がフィンランド領であるという形で決着をみたのですが、そこにあの新渡戸稲造(昔の1万円札の肖像の人。『武士道』を英語でしたためたことでも有名!)が関わっていました。意外な形で日本とのつながりを感じられます。

スウェーデン語のみで書かれたマリエハムンの道路標示
フィンランド国内ながら、町内の表示はスウェーデン語のみで書かれている

オーランド諸島は自然も豊かです。

筆者が訪れたのは2017年4月中旬のイースター休みの時でまだ寒々しさが残る頃でしたが、一年中葉の落ちない常緑樹と、春に向けて芽吹き始める木々、青く澄んだ綺麗な空と海、そしてオーランドにしかない観光名所に完全に心奪われました。

そんなフィンランドの特別な場所、オーランド諸島で外せない観光スポット(行ったところと行ってないところも含めて)をいくつか紹介します!

オーランド諸島の玄関口、港町マリエハムン

オーランド諸島の主都マリエハムンの写真
マリエハムンのとある通り

オーランド諸島の主都、マリエハムン(Mariehamn)。フィンランド語ではマーリアンハミナ(Maarianhamina)と呼ばれます

フィンランド方面からオーランド諸島に上陸する方はほぼ間違いなくここが玄関口となるでしょう。オーランド諸島の人口のおよそ半分の人々が住む小さな港町です。

街の雰囲気はフィンランドの地方都市といった感じ。あまり町に歴史を感じさせるような建物は多くありません。

通りは綺麗で、かわいい木造建築の住宅が並ぶエリアもあります。人々でごった返すような場所もなく、非常にのどかな場所です。

オーランド海洋博物館

オーランド海洋博物館
オーランド 海洋博物館

オーランド海洋博物館(Ålands sjöfartsmuseum)は、オーランド諸島の海洋貿易の歴史についての博物館。

外から見るよりもより館内は広くて見ごたえがありますし、売店のお土産も充実。海と文化的・経済的に密接なつながりを持つオーランド諸島ならではのお土産が買えます。

博物館の外には本来なら帆船ポンメルンが停泊してます……そのはずが、2019年までは改装などのため公開していないとのこと! なのでドックに言っても船の姿はありませんでした……結構楽しみだったので残念。

筆者のオーランド旅行初日はイースターの休日にぶち当たったので外は人っ子一人歩いておらず、レストランもほぼ閉まっていたため観光は絶望的だったのですがここだけは奇跡的に開いていました

入り口近くにはシーフードレストラン・Restaurang Nauticalもありますので博物館を歩いた後に食事ができるのも良いですね(筆者が行った日は閉まっていましたが)。

オーランド文化歴史博物館

オーランド文化歴史博物館(Ålands kulturhistoriska museum)は、マリエハムン市役所のすぐそばにある博物館。

石器時代から現代までオーランド諸島がそのような歴史を辿ってきたのか、歴史的な展示物を見ながら知ることができます。

日本で知るのはほぼ不可能であろうオーランド諸島の歴史に触れたいという方にはうってつけの場所です。特に中世以降の歴史は中々興味深いです。

実はオーランド文化歴史博物館の館内には美術館(Ålands konstmuseum)も併設

博物館のチケット一枚で行き来可能なので、博物館に行った人なら気軽に入れます。美術館は大きくはないですが、ムーミンで有名なトーヴェ・ヤンソンがオーランド諸島のはずれの小島Källskärの情景を描いた『Källskärstavlan』も展示されていたりします。

マリエハムンの高台からオーランドの地形を眺める

マリエハムンの高台から見たオーランド諸島の自然
マリエハムンの高台(Badhusberget)から見たオーランド諸島の自然

マリエハムンには、いくつか絶景ポイントがあります。

その一つが、町の西部にある高台バードフースベルイェット(Badhusberget)。頂上に登るまでけっこう距離があって大変なのですが、眼下にオーランド諸島の地形やポンメルン号が停泊している景色はなかなかのものです。

高台までに至る道は町からはずれてすぐの場所ですが、公園のような感じで緑に囲まれて散策を楽しむことができます。観光していると足が疲れますが、それでも町から出て散策を楽しみたい時は良い運動になるかと思います!

先ほど紹介したオーランド海洋博物館のすぐウラから散策コースに行けるので(ポンメルン号が見えるのはそのため)、博物館をのんびりと見た後のエクササイズにいいかもしれませんね。博物館って意外と疲れるけど。

(ちなみに高台の頂上にはVattentornetという名前の灯台があるのですが、観光客が普通に登れるのかは不明です)

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オーランド諸島中世の城跡、ボマルスンド要塞

住んだ青空の下のボマルスンド要塞
住んだ青空の下のボマルスンド要塞

ボマルスンド(Bomarsunds fästning/Bomarsundin linnoitus)は、オーランド本島の東の端にある、要塞の跡地。ボマルスンドという名前は、スウェーデン語だとボマシュンドと発音されるようです。

マリエハムンからは、Ålandstrafikenの4番のバスで30分強の場所にあります。オーランド本島(Fasta Åland)の東の端の、スンド(Sund)という地区にあります。最寄りのバス停はBomarsunds fästning

ボマルスンドは、オーランド諸島がフィンランド本土とともにロシア帝国の支配下に入った後に建てられました。要塞はクリミア戦争の時に破壊され今ではほんの一部が廃墟となって残るのみですが、当時はロシア人兵士が2000人駐在しており物見の塔や病院施設などがあったそうです。

ボマルスンドは完全にオープンエアーなので入場料等はかからず、好きなだけハイキングを楽しめます。

筆者は時間がなかったのでメインの要塞の周辺をぶらついただけでしたが、ハイキングコースもあるようなので時間のある方は是非散策してみては。

なお、ボマルスンド要塞については旅行記として別途に記事を書いてます。よかったらそちらもご覧ください!

自然の中の質素な城塞、カステルホルム城

住んだ青空の下のカステルホルム城。閉まってて中には入ってないけど紹介します
住んだ青空の下のカステルホルム城

カステルホルム城(Kaltelholms slott/Kastelholman linna)。前述のボマルスンド要塞と同様スンド(Sund)という地区にあり、ボマルスンドと同じく4番バスのKastelholmというバス停で降りて20分ほど歩いて行きました。

フィンランドにある数少ない中世のお城の一つで、14世紀に建てられました。時のスウェーデン国王(グスタフ・ヴァーサ)はここがお気に入りだったようで、実際に訪れたこともあるのだそう。

近くにはヤン・カールスゴーデン野外博物館(Jan Karlsgården open air museum)もありますが、こちらも閉まっていました。しかし周りの穏やかな風景だけでも一見する価値ありです。

カルテルホルム城から少し歩くとSmakbyn(スマークビューン)という名前のレストランがあります。オーランド諸島の地元の料理を楽しめるので、お城や野外博物館の観光ついでのランチや軽食にどうぞ。パンケーキもありますよ。

レストランSmakbynの内観
カステルホルム城近くのレストランSmakbynの内観
Smakbynで食べられるパンケーキ
Smakbynではオーランド諸島名物のパンケーキも食べられます。

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おまけ

ここからは筆者が行っていない場所シリーズ。次オーランド諸島に行く機会があったら是非行ってみたいです。

オーランド製クラフトビール。スタルハーゲン醸造所

スタルハーゲン醸造所(Bryggeriet Stallhagen)は、2004年設立、オーランド本島の中部のゴードビュー(Godby)にあるマイクロブルワリー。マリエハムンからスンドに向かう途中にあります。

オーランド諸島随一のビール醸造所で、主都マリエハムンのレストランでは必ずと言っていいほどスタールハーゲンのビールが飲めます。フェリーの免税店でも入手できます。

フィンランド本土でも販売されているとのことですが、それすら筆者は見かけたことがないのでかなりレアなクラフトビールです。

筆者は4種類ほど試したのですが、お気に入りは精悍な鷲のイラストがラベルを飾る「USレッドエール」。味はそこまで強くなくむしろ控えめですが、その奥深い味わいがたまりません。

ビール好きの筆者としては、是非ブルワリーに直接赴いて出来たてのビールを味わってみたいものです。

2018年7月に青山のBeauty Libraryで開催された「フィンランド展」でもこのStallhagenのボトルビールが販売されていたみたいですね。現在貧乏学生をやっている身としては少々手が届きづらい金額でしたが……

日本でも近年人気に。メルセデス・ショコラトリー

オーランド本島の南東、レムランド(Lemland)にあるメルセデス・ショコラトリー(Mercedes Chocolaterie)。

オーランド諸島出身の夫と暮らすベネズエラ出身のメルセデスさんが、ベネズエラ産のカカオとオーランド産のバターで様々なチョコレートを製造しています。

筆者もオーランド文化歴史博物館の売店でベリー付きのミルクチョコレートを買ったのですがとてもおいしかったです。日本でも知っている方は知っているかもしれませんね。


オーランド諸島の海に面したホテル・アルキペラグ

最後に筆者が宿泊したホテルも紹介。

僕が滞在したのはマリエハムンの西の海岸のすぐ近くにあるホテル・アルキペラグ(Hotell Arkipelag)。オーシャンビューの部屋もあり、フィンランドらしく共用サウナも完備。夏にはプールも営業しているようです。

1階にはレストランバー「Oliven」も併設されており、ディナーもここで楽しむことができます(Stallhagenのビールも置いてあります!)。

朝食はシーフード中心のビュッフェで、これがまたおいしくてたまらない。別記事で書いた、オーランド諸島のイメージカラーを連想させるフルーティな紅茶も愉しむことができます。

筆者はこの紅茶が好きすぎたので別の記事に書きました。

ホテル・アルキペラグからは、前述のオーランド文化歴史博物館まで通りをまっすぐ進めばいけますし、バスターミナルまで徒歩5分でいけるので意外と便利な場所にあります。

ランチも楽しめるショッピングセンター・Sittkoff Galleriaも徒歩3分ほどですぐ近く。オーランド諸島滞在時のホテル選びに迷ったら、選択肢の一つとして考えてみてください。

Booking.comでホテルアルキペラグ(Hotel Arkipelag)の詳細を見る。

Hotell Arkipelagの1階のレストランバー
Hotell Arkipelagの1階ににあるレストランバーOlivenでは夕食をとることもできる。もちろんStallhagenのビールも飲める

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オーランド諸島への行き方

Viking Lineの船の写真
Photo by Tapio Haaja on Unsplash

オーランド諸島に行く場合は、フィンランド/スウェーデンからフェリーか飛行機を使う必要があります。僕はヘルシンキから行ったのでヘルシンキからの行き方を解説します。

海路では、ヴァイキングライン(Viking Line)やタリンク・シリヤライン(Talllink & Silja Line)が利用できます。いずれの場合もヘルシンキ発ストックホルム行きのフェリーがマリエハムンに寄港した時に下船することになります。

僕はViking Lineの夜出発のフェリーを使いましたが、現地到着が朝の4時。真っ暗でお店も何も開いていない中重いバックパックを背負いながら明るくなるのを待たなければならなかったので、到着時間はちゃんと考慮してフェリーを選ぶようにしてください。

ヘルシンキとマリエハムンは意外と近いので、ナイトクルーズである必要はないかもしれません。

空路ではフィンランド航空オーランド航空が就航しています。ヘルシンキ・ヴァンター空港から直行便だと1時間から1時間半かかるようですが、トゥルクでの乗り継ぎが必要な場合が多いようです。

おわりに

いかがでしょうか。

ここで紹介した以外にも、サイクリングやカヤックなどのアクティビティもたくさんあります(インドア派な筆者は博物館や歴史的建造物に偏りがちなのです)。

オーランド諸島公式の観光サイト「Visit Åland(英語のみ)」やフィンランド政府観光局のサイト「Visitfinland(日英仏露語etc)」にもたくさん情報が載っていますのでご自身の趣味趣向に応じて調べてみてください。

また、別の記事で筆者おすすめのオーランド土産を1つ紹介しています英語版もあります)。お時間があればそちらもご覧ください。

これからもっとオーランドファンが増えたらいいな!

オーランド諸島観光で参考になるウェブサイト

上で挙げた場所をすべて地図にまとめてみました↓