スタイリッシュかつ機能的なデザイン、政治の透明性、国民の幸福度などで他の北欧諸国と共に注目されるフィンランド。

フィンランドはまた、飛行機で9時間半ほどで行ける「日本に一番近いヨーロッパの国」でもあります。

今回のテーマは、「フィンランドという国について知りたい方におすすめな本」。フィンランドという国や社会を様々な観点からを知ることができるブックリストです。

ここで紹介するのは、フィンランド社会を「歴史」「観光」「留学」「文化」「政治」「教育」「仕事」「言語」といった観点で知ることができる本たち。

最後の1冊は分厚~い学術書ですが、それ以外の本を通読するだけでもフィンランドという国に対して一通りの知識が身につくと思います(最後の1冊もすごく面白いですよ)。

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『フィンランドでかなえる100の夢』

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最初に比較的新しい本から紹介します。

フィンランドでかなえる100の夢』は、フィンランドについてまだあまりよく知らない方におすすめの、フィンランド文化や観光地の入門書。雑誌感覚で読めます。

フィンランドでどんなことができるのか、典型的な観光地や観光アクティビティからマイナーなものまで、美しい写真で紹介されています。

ヘルシンキとラップランドに偏っていないのも良いですね。フィンランドのあちこちでやりたいことが見つかること間違いなし。

地球の歩き方』や『Plat』、『ことりっぷ』といったガイドブックに合わせて持っておけば、お役立ち情報を集めつつ、旅行前に気持ちを膨らませられるはず。

kukkameriは編集者などとして活躍する内山さつきさんと新谷麻佐子さんの2人で結成されたユニット。フィンランドに関する著作や雑誌でコンテンツを発表しています。

(本書の100つの夢のうち、9つはフィンランドではなくエストニアでかなえる夢になっているのは内緒)

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『フィンランドを知るための44章』

こちらは定番ですね。明石書店から出ている「エリア・スタディーズ」シリーズの1つ。

フィンランドの現代史から、フィンランドの現代社会や地域の事情、文学や建築などの文化から日本との関りまで、一通りの知識が載っています。

とりあえず最初にこの本に目を通しておけば、フィンランドについての包括的な知識がつきます。フィンランドについてはほとんど知識の取りこぼしがないくらい。

けっこう分厚い&文字が多めなのでやや人を選ぶものの、それが平気な人なにとっては最適なフィンランド入門書です。

もし数日間フィンランドに旅行に行く予定で、ある程度フィンランドについて知っておきたいならこの一冊とガイドブックで十分でしょう。

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『フィンランド語は猫の言葉』

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KADOKAWA
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こちらは、1970年代にヘルシンキ大学に留学した稲垣美晴氏の経験を描いたエッセイ。

フィンランド語については辞書すらなかった時代の留学体験談が、言語(とくにフィンランド語)を中心に、ユーモアたっぷりに語られていきます。引き込まれるような文章ですらすらと読めます。

この本は、フィンランドの大学に留学する、あるいは留学したいと考えている人におすすめ。かくいう僕も、留学前にこの本を何度か読みました。

特にフィンランド語に興味がある人は楽しめるかも知れません。ただ社会福祉や教育の分野はあまり触れられていないので注意。

『フィンランドの教育はなぜ世界一なのか』

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新潮社
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フィンランドといえば教育。2000年のPISAテストで超好成績をおさめたことがまだ記憶に焼き付いている人も少なくないのでは?

フィンランドの教育はなぜ世界一なのか』ではお子さんを日本とフィンランドの両国で育てた著者の経験と、フィンランドの教育システムと歴史が詳細が書かれています。

それと著者はヘルシンキ大学の非常勤教授を務めているので、まさにフィンランドの教育システムの真っただ中にいらっしゃるわけです。

フィンランドの学校教育、そしてフィンランドの社会を「教育」というテーマを中心に知りたい方にはおすすめです。新書ですし文章も難しくないので短時間で読めます。

ちょっと出羽守っぽいタイトルが気に障りますが、中身は至極まともですよ。「宿題がない」みたいな、少し前によく聞かれたようなウソっぱちもありません。

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『フィンランド人はなぜ午後4時に仕事が終わるのか』

フィンランドといえば教育やデザインが有名ですが、近年ではその働き方についても注目されるようになりました。

日本でも「働き方改革」等々と盛り上がっている話題ではありますが、未だ長時間労働や非正規雇用などの問題が山積みで、その恩恵はほんの一部にしか現れてないという感じが否めません。

一方のフィンランド。2019年にヘルシンキが「ワークライフバランスが最も整った都市」に選ばれました。同じランキングでも東京は最下位なので、両者はまさに両極端。

『フィンランド人はなぜ午後4時に仕事が終わるのか』では、そんなフィンランド人の働き方やそれに関するルールなどが分かりやすくまとめられています。

著者はフィンランドで学業と就労を経験し、現在はフィンランド大使館で広報を務める方。

単なる法律などの紹介に留まらず、著者が実際に体験した事柄や、フィンランド人の余暇のライフスタイルまでは広くカバーしています。

フィンランドの仕事と余暇文化について知りたい人におすすめな一冊です。

『物語 フィンランドの歴史 – 北欧先進国「バルト海の乙女」の800年』

続いてはフィンランドの歴史についての一冊。中公新書から出ている『物語 フィンランドの歴史 – 北欧先進国「バルト海の乙女」の800年』。

フィンランドの歴史に関しては冒頭の『44章』でも解説されていますが、ほぼ現代史のみ。

こちらの本では、フィンランドの歴史を中世史から一通り解説されています(とはいっても、フィンランドの中世史は短いのですが)。

フィンランドの歴史についての本が別個に一冊欲しいという方におすすめ。新書なので持ち運びにも便利ですね。旅行のお供にもいいかも。

また歴史書にはこの本とは別に明石書店の『フィンランドの歴史』(D・カービー著)という本がありますが、こちらは学術書の性格が強く、かなりディテールが濃くかつ分厚いです。

より専門的に学びたい方、あるいはちょっとリファレンス的に使うのには良いかもしれません。

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『カレワラ』

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言わずと知れた(?)、フィンランドの国民的叙事詩。いわゆるフィンランド神話というやつです。

著者エリアス・リョンロートが、自身がカレリア地方を巡って収集した口承文学を一つの物語にまとめ上げたもの。19世紀半ばに出版され、フィンランド人の独立への機運を一層高めた作品です。

フィンランドを代表するアーティストにも強いインスピレーションを与えました。シベリウスの『トゥオネラの白鳥』や『クッレルヴォ』、ガッレン=カッレラの『アイノの物語』がその例。

近代のフィンランドに多大な影響を与えた作品なので、フィンランド文化に興味がある方は読んで損はないはず。

ただ、フルバージョンの『カレワラ』は非常に長く少々読みにくいので、リライト版の『カレワラ物語』(春風社)や岩波少年文庫版がおすすめです。

『カレワラ』についてはレビューを別記事として長々と書きましたので、よければそちらもご覧ください。この時に読んだのは講談社学術文庫から出ている森本覚丹訳です。

『「言の葉」のフィンランド 言語地域研究序論』

最後に、かなり専門的な本、というか学術書を紹介します。

フィンランド語界隈では超有名な吉田欣吾氏(東海大学文学部北欧学科准教授)の『「言の葉」のフィンランド 言語地域研究序論』。

フィンランドという国、社会を「言語」という観点から網羅的に解説した本です。言語そのものというよりも社会言語学の範疇ですね。

フィンランド国内で話される言語の社会言語学的状況、「内国語」という概念、国外のフィンランド語の親戚語の状況……などなど。

多言語社会としてのフィンランドが自国内に存在する言語にどう対応しているのか詳細に学ぶことが出来ます。スウェーデン語やサーミ語のような伝統的な言語から、ソマリ語やアルバニア語など最近入ってきた言語まで。

フィンランドの社会言語学的事情をここまで詳しく解説した本は他にないはず。

多言語国家に住んでいることから、フィンランド人は言語に対する関心が非常に高いように思えます。バイリンガルはもはや普通。そんなフィンランド社会の言語に対する姿勢がよく分かります。

ちなみに僕はこの本を「フィンランド語の歴史まとめ」という記事を書く上で非常に非常に参考にしました。

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おまけ:フィンランド語を学びたい時は

フィンランド語は正直にいうとマイナーな言語なので、教材はあまり多くありません。

それでも、いい教材が数冊あります。

まずは定番・白水社の『ニューエクスプレスプラス』から、フィンランド語の本が出ています。会話文をベースにフィンランド語を学べます。

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本格的に文法を学ぶなら、同じく白水社から出ている『フィンランド語文法ハンドブック』が最適。フィンランド語というマイナー言語の、唯一の本格的文法書です。

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フィンランド語独学用の教材については、「フィンランド語学習にヘッドスタートを。初学者におすすめの教材を紹介!」という記事に詳しく書いています。ぜひご覧ください。

まとめ:様々な観点からフィンランドを知る

以上、今回はフィンランドについて知りたい方への本を紹介しました。

北欧の国フィンランドは、2000年にPISAのランキングで1位を飾った後、

  • 報道の自由度
  • 政治の透明性
  • 国民の幸福度
  • デザイン
  • ワークライフバランス
  • 男女平等やジェンダー

などといった点で注目を集めています。

ちなみに言語オタクである僕のダントツのおすすめは、最後に紹介した『「言の葉」のフィンランド 言語地域研究序論』です。

もしこのブックリストが皆様のお役に立てたなら大変幸いです。ここまでお読みいただきありがとうございました。

また、フィンランドを知るためのブログやウェブサイトについても他にまとめてありますので、ぜひそちらもご覧ください。

Thumbnail Image Credit: MAKY_OREL on Pixabay