フィンランド語の基礎的な動詞の現在形と過去形(+各否定形)を紹介します。

フィンランド語に限らず、基礎的な=会話でよく使う動詞というのは、たくさん使われるだけあって語形変化が例外的な場合が多いです。フランス語の動詞の活用を見て頂ければよく分かるように思います。

現にここで紹介する動詞で「最も大きな変化グループ」である動詞は1つしかなかったりします。

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動詞の活用の概要

フィンランド語の動詞は、主語の人称(要するにその動詞の動作を誰がやるか)によって変化します。1人称、2人称、そして単数複数……といった具合です。

英語には3人称単数の場合(=1人の第三者が主語の場合)に、動詞に-sをつけますよね。それが1~3人称+単数複数と合計6種類あるわけです。フランス語やドイツ語、ロシア語などを習ったことがあれば理解しやすいでしょう。

覚えるのが大変そうに思えますが、フィンランド語の活用は極少数の例外を除いてかなり規則的。基本的に「語幹」に「人称語尾」をくっつけるだけなので、ルールをおさえてしまえば非常に楽になります。

フィンランド語の人称語尾はこちら。

単数複数
1人称-n-mme
2人称-t-tte
3人称母音を伸ばすor何もつけない-vat

これらの語尾を「語幹」にくっつけるだけで完成。あとは現在形、過去形、条件法などの語幹の導き方を覚えればいいだけです。

こんな風に動詞が人称変化するので、主語が3人称のとき以外は主語を省略しても意味が通じます。(3人称は人でもモノでも何でもあり得るから主語をちゃんと明示しないと全く分からなくなりますし)

否定形は、現在形の場合、否定動詞+語幹(人称語尾なし)という特殊なやり方。否定動詞は主語の人称で変化します。

過去形の否定形は、否定動詞+能動過去分詞という形で表現。能動過去分詞はフィンランド語独特のもので難しく聞こえますが、英語の現在分詞(-ing)に過去の意味を付け足したものです(フィンランド語には分詞が4つありますが、それは別の話)。

動詞の発音には少し厄介なポイントが。実は原形(or辞書形or不定形)と否定形の後ろには声門閉鎖音のような、つまった音が出現します。「あっ」というときの「っ」の部分で、厄介なことながら表記には反映されません。

例をだすと、「~である」という意味のollaは「オッラッ」のような発音になります。

olla「~である」

現在現在(否定)過去過去否定
1人称単数olenen oleolinen ollut
2人称単数oletet oleolitet ollut
3人称単数onei oleoliei ollut
1人称複数olemmeemme oleolimmeemme olleet
2人称複数oletteette oleolitteette olleet
3人称複数ovateivät oleolivateivät olleet
  • Minä olen japanilainen.「私は日本人です」
  • Oletko kotoisin Suomesta?「(あなたは)フィンランド出身ですか?」
  • Olemme Helsingissä tänä kesänä.「私たちはこの夏ヘルシンキにいます」(未来)
  • Olimme Helsingissä viime viikolla.「私たちは先週ヘルシンキにいました」

ollaは、英語のbe動詞にあたる動詞。コピュラと呼ばれる、主語と述語の一致を示すもの。

発音は/olːɑ(ʔ)/なのでオッラッです。語幹はole(3人称形をのぞく)。過去形だとoli。

語形変化のパターンとしては、後述のtullaやmennäと同じベースの不規則動詞。tullaとmennaと比べて頂きたいのですが、3人称形が不規則な形になっていますね。それ以外はtullaと同じ変化をします(厳密には他にも違うところがあるのですが、それはまた別の話)。

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tulla「来る」

現在現在(否定)過去過去否定
1人称単数tulenen tuletulinen tullut
2人称単数tuletet tuletulitet tullut
3人称単数tuleeei tuletuliei tullut
1人称複数tulemmeemme tuletulimmeemme tulleet
2人称複数tuletteette tuletulitteette tulleet
3人称複数tulevateivät tuletulivateivät tulleet
  • Tuletko mukaan?「(あなたは)一緒に来る?」
  • Hän tuli punaiseksi.「彼/彼女は赤くなった」
  • Monet maahanmuuttajat tulivat Suomeen tänä vuonna.「今年たくさんの難民がフィンランドに来た」

英語のcomeに相当するtullaはつぎにでてくるmennäと同じ活用パターン。

発音は/tulːɑ(ʔ)/でトゥッラッです。 語幹は現在形ならtule、過去形ならtuli。

mennä「行く」

現在現在(否定)過去過去否定
1人称単数menenen menemeninen mennyt
2人称単数menetet menemenitet mennyt
3人称単数meneeei menemeniei mennyt
1人称複数menemmeemme menemenimmeemme menneet
2人称複数menetteette menemenitteette menneet
3人称複数meneväteivät menemeniväteivät menneet
  • Menen Suomeen tänä talvena.「(私は)この冬にフィンランドに行きます」
  • Menimme ostamaan maitoa.「(私たちは)牛乳を買いに行きました」

mennäは使われている子音こそ違いますが、tullaと同じ変化タイプの動詞です。

発音は/menːæ/でメンナ。 語幹は現在形ならmene、過去形ならmeniです。

mennäは英語で言うgo。ただ「行く」の他にも、Miten menee?「調子どう?」といったフレーズでも使えます。

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juoda「飲む」

現在現在(否定)過去過去否定
1人称単数juonen juojoinen juonut
2人称単数juotet juojoitet juonut
3人称単数juoei juojoiei juonut
1人称複数juommeemme juojoimmeemme juoneet
2人称複数juotteette juojoitteette juoneet
3人称複数juovateivät juojoivateivät juoneet
  • Juon maitoa.「(私は)牛乳を飲みます」
  • Hän ei juo maitoa. 「彼/彼女は牛乳を飲みません」
  • Juotteko kahvia? 「(あなたたちは)コーヒーを飲みますか?」
  • Join liian paljon kahvia.「(私は)コーヒーをたくさん飲み過ぎた」

juoda(飲む)と次のsyödäで同じグループ。/juodɑ(ʔ)/でユオダッ 。

過去形がかなり特殊で、最初の母音(この場合u)を消してiをつけて語幹とし、そこに人称語尾をつけるというやり方。

つまり-daを抜いたjuoが、現在形の語幹になり、さらにjoiが過去形の語幹になりますね。

syödä「食べる」

現在現在(否定)過去過去否定
1人称単数syönen syösöinen syönyt
2人称単数syötet syösöitet syönyt
3人称単数syöei syösöiei syönyt
1人称複数syömmeemme syösöimmeemme syöneet
2人称複数syötteette syösöitteette syöneet
3人称複数syöväteivät syösöiväteivät syöneet
  • Minä syön tomaatteja. 「私はトマトを食べます」
  • Syötkö lihaa? 「(あなたは)肉を食べますか」
  • Me emme syö lihaa. 「私たちは肉を食べません」
  • Söin pullan välipalaksi. 「(私は)軽食に菓子パンを食べました」

発音は/syødæ(ʔ)/でスュオダッ。日本語にない母音が連続しているのでまともに発音するにはかなり根気がいります。

非フィンランド語ネイティブには発音がかなり難しくて、よくsuodaのように言っている人が頻繁にいますね。

こちらもjuodaと同様過去形が特殊。最初の母音(この場合y)を落としiをつけて語幹とし、そこに人称語尾をつけます。 現在形の語幹がsyö、過去形だとsöiです。

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tehdä「する、作る」

現在現在(否定)過去過去否定
1人称単数teenen teeteinen tehnyt
2人称単数teetet teeteitet tehnyt
3人称単数tekeeei teetekiei tehnyt
1人称複数teemmeemme teeteimmeemme tehneet
2人称複数teetteette teeteitteette tehneet
3人称複数tekeväteivät teetekiväteivät tehneet
  • Minä teen nyt lohikeittoa.「私は今サーモンスープを作っているの」
  • Mitä sinä teet viime aikoina? 「あなたは最近何してるの?」
  • Hän tekee hyviä piirakoita. 「彼/彼女は美味しいパイを作る」

フィンランド語の代動詞。英語のdoにあたりますが、makeの意味にもなります。

「する」という動詞が「作る」という意味にもなるのは、割とヨーロッパ言語でよく見る特徴です(フランス語のfaire、ロシア語のделатьなど)。

発音は/tehdæ(ʔ)/で、テヘダッって感じかな。

こちらは完全無欠の不規則動詞です。tehdäという原形ながら、動詞はteeとteke。

フィンランド語には「子音階程交替」というルールがあるのですが(詳細は別記事をご覧ください)、それが適用されない3人称形の場合のみ語幹がtekeになります。

過去形だと語幹がteiかteki。現在形のときと同様に、「子音階程交替」のない3人称のときtekiという語幹になります。

puhua「話す」

現在現在(否定)過去過去否定
1人称単数puhunen puhupuhuinen puhunut
2人称単数puhutet puhupuhuitet puhunut
3人称単数puhuuei puhupuhuiei puhunut
1人称複数puhummeemme puhupuhuimmeemme puhuneet
2人称複数puhutteette puhupuhuitteette puhuneet
3人称複数puhuvateivät puhupuhuivateivät puhuneet
  • Puhun suomea.「(私は)フィンランド語を話せます」
  • Puhutko englantia?「(あなたは)英語を話せますか?」
  • Me puhuimme animesta.「私たちはアニメについて話していました」

puhuaは非常に基本的な変化をする動詞です。発音は/puhuɑ(ʔ)/でプフアッ。 語幹はpuhu、過去形ならpuhui。

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「持つ」は?

英語など他のヨーロッパ言語では基礎的な動詞である「持つ」。英語ではhave、フランス語のavoirですね。

実は、フィンランド語には「持つ」という動詞がありません(「所有する」はありますが)。

じゃあどうするかというと、主語の接格+ollaで対応します。接格とはフィンランド語の格変化の一つで「~の上に」という意味の格で、それとbe動詞を使って「持っている」を表現するわけです。

日本語の「~にはーがある」という構文と似ていますね。ロシア語でも同様の構文(У вас есть ~ など)がありますのでロシア語学習者には聞きなれた表現でしょう。

  • Minulla on kaksi kissaa. 「私は猫を2匹持っている=飼っている」
  • Onko sinulla nenäliinaa? 「あなたはティッシュを持っていますか?」
  • Meillä ei ole rahaa .「私たちにはお金がない」
  • Onko teillä leipäjuustoa?「レイパユーストはありますか」※スーパー等で探しているものを聞くときの表現

ちなみにレイパユースト(leipäjuusto)とはフィンランド料理の一つで、パンみたいなチーズのような絶妙な味&食感のチーズです。

以上、フィンランド語の基本的な動詞の活用(現在形と過去形)を紹介しました。

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