こんにちは。めいげつです。
実は英語よりも複雑かつ体系的な、フィンランド語の分詞について解説します。
<記事は広告の後にも続きます>
そもそも分詞とは
分詞(participle)とは、動詞の変化形の一つで、現在や過去といった時制の意味をもつものの、形容詞のように扱われるものをいいます。
英語では、現在分詞と過去分詞の2つを習いましたよね。-ingで終わる現在分詞と、-edで終わる過去分詞(edで終わらないものもある)。
英語では現在分詞は「~している」を意味し、Children are reading a book in the library.とbe動詞と合わさって進行形をつくったり、A boy reading a book over there is my son.のように名詞を修飾したりできます。
過去分詞は受け身の意味を持っていて、The book is read by many peopole.とbe動詞と合わさって受動態をつくったり、This book written by Haruki Murakami is my favorite.と名詞を直接修飾できます。
amazingやinterestedのように完全に形容詞化しているものもありますね。
フィンランド語の分詞
先ほど、英語には分詞が2つあると書きました。
一方フィンランド語には、なんと4つの分詞があります。英語の倍です。
なぜそれだけ多いか? それは英語が埋めていない穴をフィンランド語が埋めているからです。
英語の分詞は、現在分詞と過去分詞の2つでした。
しかしこの2つの分詞の性格を考えると、英語の分詞は「現在能動分詞」と「過去受動分詞」ということができます。
ただ、現在にも受動はあるはずだし、過去に能動がないなんてことはありませんよね。これが英語が埋めていない2つの穴です。表にすると以下のようになります。
現在 | 過去 | |
---|---|---|
能動 | ○ | – |
受動 | – | ○ |
そしてフィンランド語は、この「穴」を全て埋め尽くしているので、以下のようになります。
現在 | 過去 | |
---|---|---|
能動 | ○ | ○ |
受動 | ○ | ○ |
なので、フィンランド語には2つの現在分詞(能動、受動)、2つの過去分詞(能動、受動)があることになります。
一見複雑で覚えるのが大変に思えます。まあその通り実際に覚えるのは大変です。ただ細かいルールが多少あっても非常にシステマティックなので、臆する必要はありません。
では一つ一つ見ていきましょう。
現在能動分詞
「~している」という意味。目印は-vä/va。
英語の現在分詞に相当します。ただ英語と違い現在完了形をつくることはできず(完了形には過去能動分詞を使います)、形容詞のように「名詞を修飾すること」のみできます。
juokseva poika = a running boyといった感じ。
英語とのもう一つの違いは、修飾語が複雑でも名詞の前に置かれる、ということ。「本を読んでいる男の子」は英語だとA boy reading a bookですが、フィンランド語ではkirjaa lukeva poikaとなります。
別記事「もはや親戚?フィンランド語と日本語の似ている点と似てない点」でも紹介したのですが、このように分詞を使えば日本語と全く同じ構文のフレーズを作ることができますね。
分詞は形容詞なので、もちろん格変化します。
- Tykkään tuolla kirjaa lukevasta pojasta.「あそこで本を読んでいる男の子が好きです」※出格
- Puistossa jalkapalloa pelaavat lapset.「公園でサッカーをしている子供たち」※複数主格
- Puistossa jalkapalloa pelaavien lapsien perheet「公園で遊んでサッカーをしている子どもたちの親」
現在分詞の作り方は難しくありません。語幹をもとめて、そこに-vä/vaをつけるだけ。
フィンランド語には母音調和があるので、前母音タイプの動詞なら-vä、後母音タイプなら-vaをつけるだけ。例を見てみましょう
- puhua → 語幹puhu- → puhuva
- lähteä → 語幹lähte- → lähtevä
- tykätä → 語幹tykkää- → tykkäävä
- lämmetä → 語幹lämpene- → lämpenevä
<記事は広告の後にも続きます>
現在受動分詞
「~されている」という意味。目印は-tävä/tava。現在能動分詞も-va/väで終わるので、ちょっと紛らわしいですね。
英語には対応する変化形がありません。
- suomeksi annettava puhe「フィンランド語でされる演説」
- huomioon kiinnitettävä tapahtuma「注目す(される)べき出来事」
基本的には現在受動の名が表すとおり「~されている」という意味なのですが、それよりも「~されるべき」という意味で使われることが多いです。
- Minun on luettava tätä kirjaa.「私はこの本を読まなきゃいけない」
- Meidän on lähdettävä.「私たちはもう出発しないといけない」
過去受動分詞の作り方は、まず1つが語幹を求め、-ttävä/ttavaをつけるやり方。tが2つあるのに注意。
単語によっては子音階程交替(kpt交替)を適用します。
- puhua → 語幹puhu- → kpt交替なし → puhuttava
- lähteä → 語幹lähte- → lähde- → lähdettävä
- tykätä → 語幹tykkää- → tykä- → tykättävä
- lämmetä → 語幹lämpene- → lämme- → lämmettävä
もう1つの作り方は、tが1つ少ない-tävä/tavaを追加するもの。これは不定形が-dä/daで終わるタイプの動詞と、ダブル子音+ä/aで終わるタイプの動詞に当てはめます。
- käydä → 語幹käy- → käytävä
- juoda → 語幹juo- → juotava
- tulla → 語幹tule- → tul- → tultava
- mennä → 語幹mene- → men- → mentävä
過去能動分詞
過去形で能動的な意味を持つ分詞。これも英語にはない形です。目印は-nyt/nut。これは「~した」とか「~していた」という意味になります。
- Ulkomaasta tullut opiskelija「外国から来た学生」
ここで現在能動分詞を使ってUlkomaasta tuleva opiskelijaとすると、「これから来る」とか「いままさに来ているところ」といったニュアンスになります。
そして、これも例外なく格変化します。
- Ulkomaista tulleiden opiskelijoiden kielitaidot ovat mahtavat.「外国から来た学生の言語能力はすばらしい」※複数属格
そして重要な使い方が、フィンランド語のbe動詞であるollaとくっつくことで完了形をつくること。英語やフランス語ではhaveに相当する動詞と過去分詞を使うので、少し気を付けたいところです。
- Olen asunut Suomessa kolme vuotta.「私はフィンランドに3年住んでいる」英:I have lived in Finland for three years.
- Olen opiskellut suomea kaksi vuotta.「私たちはフィンランド語を2年勉強している」英:I have learned Finnish for two years.
- Olemme matkustaneet Japaniin kerran.「私たちは日本に一度旅行に行ったことがある」英:We have travelled in Japan once.
主語が単数と複数の場合で分詞の形が-nutと-neetとなっていることに注意してください。
過去能動分詞の作り方は3つあります。
まず基本的なのが-nyt/nutとつけるもの。kpt交替は適用しません。
- puhua → 語幹puhu- → puhunut
- lähteä → 語幹lähte- → lähtenyt
- saada → 語幹saa- → saanut
次は弱語幹に-nnyt/nnutとnの数が増えたものを付け足す方法。語によってはkpt交替が適用されます。-ta/täで終わる動詞にはこの方法を使います。
- tykätä → 語幹tykkää- → tykä- → tykännyt
- lämmetä → 語幹lämpene- → lämme- → lämmennyt
最後に子音を繰り返して-yt/utをつけるもの。ダブル子音+a/äで終わる動詞はこの方法で過去能動分詞を作ります。
- tulla → 語幹tule- → tul- → tullut
- mennä → 語幹mene- → men- → mennyt
<記事は広告の後にも続きます>
過去受動分詞
過去受動分詞は、その名前にあるように「~された」という過去と受け身の意味を表すときに使えます。目印は-ty/tuです。
- Suomesta ostettu salmiakki「フィンランドで買ったサルミアッキ」
日本語の文を見ると受け身じゃないように見えますが、フィンランド語の文で「買われた」のはサルミアッキ(salmiakki)で、誰が買ったのかは明言されていません。
過去分詞も格変化するのはみなさんご存知の通りです。
- Söin Suomesta ostetut salmiakkipalat.「私はサルミアッキをいくつか食べた」
- Minä tykkään Suomessa tuotetusta viinasta.「私はフィンランドで生産されたお酒が好きだ」
よく使う過去分詞の使い方として、分詞構文的な使い方があげられます。「〇〇が~した後」という意味で、~の部分を表す過去分詞を分格にして、主語である〇〇を表す語と組み合わせて使われます。
- Kurssin päätyttyä menen kahville.「授業が終わったらカフェに行く」
過去受動分詞の作り方は2つあり、-tty/ttuをつけるものと-ty/tuをつけるものがあります。tの数が違います。つまり前者はkpt交替を伴うことがあり、後者は伴いません。
前者をつけるのは-ää/aaで終わる動詞と-tä/taで終わる動詞の2タイプ。
- ostaa → 語幹osta- → kpt交替なし → ostettu
- ottaa → 語幹otta- → ota- → otettu
- tykätä → 語幹tykkää- → tykä- → tykätty
後者のやり方を適用するのは、-dä/daで終わるタイプとダブル子音+ä/aで終わるタイプの動詞。
- saada → 語幹saa- → kpt交替なし → saatu
- tulla → 語幹tule- → tul- → tultu
◆当ブログの人気記事◇
コメントを残す