こんにちは。めいげつです。
「ヨーロッパの国々では、ユーロという一つの通貨を共通して使っている」とか、「国境を越える時のパスポート審査がない」とかよく聞きますよね。僕もヨーロッパに初めて降り立つまでは、そう思っていたものです。
こういった言説に深く関係しているのが、
- EU
- シェンゲン協定
- ユーロ圏(ユーロ採用国)
という3つの概念。
この3つ、かなり混同されがちですが、最初に言っておくと「EU加盟国=シェンゲン協定加盟国=ユーロ圏(ユーロ採用国)」ではありません。
僕はEUの加盟国と非加盟国、シェンゲン協定加盟国および非加盟国、ユーロ圏&非ユーロ圏の総勢20ヶ国約60都市を旅行しました。
こうした個人的体験も含め、「EU」「シェンゲン協定」「ユーロ圏(ユーロ採用国)」の違いを、旅行者への影響という観点でお話します。
【重要】新型コロナウィルスの流行に伴い、各地で入国制限および入国後の隔離等の対策がとられています。詳細は各国大使館等のページを確認していただくとともに、各国の感染症危険状況については、外務省の海外安全ホームページ等をご確認ください。
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EU(ヨーロッパ連合)
そもそもEUとは
ヨーロッパといえば真っ先に思い浮かぶのがEU、すなわちヨーロッパ連合(European Union)だと思います。
ではそもそもEUとは何なのか。
欧州連合(EU)は、独特な経済的および政治的協力関係を持つ民主主義国家の集まりです。EU加盟国はみな主権国家であるが、その主権の一部を他の機構に譲るという、世界で他に類を見ない仕組みに基づく共同体を作っています。現在27カ国が加盟しています。
euとは – 欧州対外行動庁
EUの存在によって市場が単一化され、さらにEU地域内の移動が非常に容易となるなど、EUはある意味一つの国家のような振る舞いを見せています(通貨は統一されていません。詳細は後述)。
ヨーロッパを統合するという思想そのものは100年以上前からの歴史がありまるす(中でも有名なのが、クーデンホーフ光子の子クーデンホーフ・カレルギーの汎ヨーロッパ主義ですね)。
2021年4月現在で、EUの加盟国は以下の27ヶ国(左から順にアイウエオ順)。
アイルランド、イタリア、エストニア、オーストリア、オランダ、キプロス、ギリシャ、クロアチア、スウェーデン、スペイン、スロベニア、スロバキア、チェコ、デンマーク、ドイツ、ハンガリー、フィンランド、フランス、ブルガリア、ベルギー、ポーランド、ポルトガル、マルタ、ラトビア、リトアニア、ルーマニア、ルクセンブルク |
加盟国の公用語全て(ただしルクセンブルク語を除く)がEUの公用語となっています。
20世紀に台頭したアメリカやソ連といった大国に対抗してヨーロッパを統合を目指し、現在ではEUはGDPでアメリカを追い越し、世界最大の経済圏を作り上げました。←イギリスの離脱とコロナ禍の影響で現在の状況は違うようです。
しかしEUという枠組み自体は、われわれ旅行者には直接的にはあまり影響してきません。
ヨーロッパを旅行する人にとって重要なのは、次からお話しする「シェンゲン協定」と「ユーロ圏」の方。
この2つもEUにおいて定められたルールのようなものですが、ヨーロッパを旅行するくらいならこの2つをおさえるだけで十分でしょう。
シェンゲン協定
シェンゲン協定とは
シェンゲン協定(The Schengen Agreement)は、ヨーロッパ諸国の人とモノの移動についての取り決めのこと。
1990年にフランス、西ドイツ(当時)、ベルギー、オランダ、ルクセンブルクの5ヶ国が、ルクセンブルクのシェンゲン村で調印した協定がもとになっています。EUそのものよりも歴史があるようですね。
よくある誤解として、「ヨーロッパの国はEUだから国境移動が自由だ」というもの。
ヨーロッパを旅行する人に直接的に影響があるのは、EUではなくこちらのシェンゲン協定の方。
シェンゲン協定に加盟している国(「シェンゲン・エリア(Schengen Area)」と呼ばれます)同士を行き来するときは、国境での審査が撤廃されています。
シェンゲン協定調印国は以下の26ヶ国。非EU加盟国は赤字にしています。
アイスランド、イタリア、エストニア、オーストリア、オランダ、ギリシャ、スイス、スウェーデン、スペイン、スロヴェニア、スロヴァキア、チェコ、デンマーク、ドイツ、ノルウェー、ハンガリー、フィンランド、フランス、ベルギー、ポーランド、ポルトガル、マルタ、ラトビア、リトアニア、リヒテンシュタイン、ルクセンブルク |
EU加盟国でもシェンゲン協定に調印していないのが、
- アイルランド
- キプロス
- クロアチア
- ブルガリア
- ルーマニア
の5ヶ国。クロアチア等に関してはシェンゲン協定加盟の動きもあるようなので、今後も注目していきましょう。
一方、EUに加盟していなくてもシェンゲン協定に加盟しているのが、
- アイスランド
- ノルウェー
- スイス
- リヒテンシュタイン
の4ヶ国です。その他ヴァチカン、サンマリノ、モナコといったミニ国家はシェンゲン協定非加盟なものの、国境審査はしていないようです(ヴァチカンは僕も経験済み)。
まとめると、ヨーロッパの国を複数旅行する場合は、定在先の国がシェンゲン協定加盟国かどうか(国境審査を行っていないか)をちゃんと知っておく必要がありますね。
というわけで、「ヨーロッパの国はEUだから国境を越えた移動が自由」が間違っているポイントがもうお分かりでしょう。
- 国境を越えた移動についての取り決めはEUではなく「シェンゲン協定」のほう
- EUに加盟しているのはヨーロッパでも一部の国
- EUに加盟国だからって国境の移動が自由なわけではない
ということです。
僕の個人的な体験ですが、シェンゲン協定加盟国からイギリスとクロアチア(シェンゲン協定未加盟)に行ったときは、現地の空港で審査を受けました。この2ヶ国に行ったときは特に緊張したのを覚えています。
イギリスは入国審査が厳しいというし、クロアチアに行ったときも久々のシェンゲン協定外への旅行だったので……
結果どちらでも大して何も起こらずクリア。どちらもフィンランドでの在留許可カード(当時の僕は交換留学生)と帰りの航空券を見せれば大丈夫でした。ただイギリスの方がはるかに時間がかかりましたが。
日本人はどのくらい滞在できるのか?
日本人の場合は、シェンゲン協定加盟国内では「あらゆる180日の期間内で最大90日間」の滞在が許されています。
相変わらずこういう文章って無駄に分かりづらいことが多いですよね。
調べてみたところ、どうやら過去180日の間にシェンゲン協定加盟国に滞在した場合はその日数が加算され、その日数が90日までならokということのようです。
そしてパスポートが10年以内に発行されたもので、なおかつシェンゲン地域を出国する日から3ヶ月以上有効でないといけません。ここも意外と見落としがちなので注意ですね。
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ユーロ圏(ユーロ採用国)
最後にお話しするのがユーロ圏(Euro zone)。ユーロ圏とは、EU加盟国のなかで、EU共通の通貨単位・ユーロを採用している国々の事です。
またEUに加盟していてもしていなくてもユーロが採用されている国をまとめるなら、「ユーロ採用国」といったほうが適切でしょう。
ユーロ圏もユーロ採用国も、旅行する分には「ユーロが使える国」程度の理解で差し支えありません(厳密には正確ではないのですが)。
海外旅行をする時は基本的に現地通貨を使うことになりますから、これも旅行者に大いに影響してきますよね。
ややこしいのが、EU加盟国全てがユーロを導入しているわけではないこと。シェンゲン協定と同じく、これも勘違いしやすい点です。
EUに加盟していても独自の通貨を持っている国はありますし、逆にEUに加盟していなくてもユーロを導入している国もあります。
ユーロを採用している国は以下の25ヶ国(アイウエオ順)。非EU加盟国は赤字にしています。
アイルランド、アンドラ、イタリア、ヴァチカン、エストニア、オーストリア、オランダ、キプロス、ギリシャ、コソヴォ、サンマリノ、スペイン、スロヴェニア、スロヴァキア、ドイツ、フィンランド、フランス、ベルギー、ポルトガル、マルタ、モナコ、モンテネグロ、ラトビア、リトアニア、ルクセンブルク |
EUに加盟しているもののユーロを導入していない(=非ユーロ圏の)国では、以下の独自通貨が使われています。
国名 | 通貨名 |
---|---|
クロアチア | クーナ(kuna) |
スウェーデン | クローナ(krona) |
チェコ | コルナ(koruna) |
デンマーク | クローネ(krone) |
ハンガリー | フォリント(forint) |
ブルガリア | レフ(lev) |
ポーランド | ズウォティ(złoty) |
ルーマニア | レウ(leu) |
しかしユーロは結構強い通貨だからか、チェコなどのユーロを採用していない国でもユーロが使えること「ごくまれに」あります。
これが、先ほど言った「ユーロ圏=ユーロが使える国」が厳密には正しくない理由の1つです。
ただこれはあくまで「たまにユーロを受け付けてくれるお店がある」くらいのこと。なので基本アテにせず、ちゃんと現地通貨を持って行くか、クレジットカードやプリペイドカードなどを携行するようにしましょう。
余談ですが、「EUに加盟しているヨーロッパの国=ユーロが使える国」という勘違いはけっこう広まっているようです。僕も「チェコの通貨はユーロじゃなくてコルナだよ」と言っても信じてもらえなかったことがあります。
まとめ
いかがだったでしょうか。今回はEU、シェンゲン協定、ユーロ圏を旅行者への影響という観点からざっくり解説しました。
大事なポイントをまとめておくと、
- EUには28ヶ国が加盟。旅行者に直接的な影響はあまりない
- シェンゲン協定調印国は26ヶ国。シェンゲン協定調印国=EU加盟国ではない
- シェンゲン協定調停国どうしの行き来では、国境での審査がない
- 日本人は、シェンゲン協定加盟国内では「あらゆる180日の期間内で最大90日間」滞在できる
- ユーロ圏は、通過としてユーロを採用している国。EU加盟国=ユーロ圏ではない。
……こんな感じでしょう。
EUがあること自体は旅行者に直接的にはあまり影響してきません。
しかしシェンゲン協定とユーロ圏は直接響いてきますので、ヨーロッパの複数国にまたがる旅行をする方はちゃんとおさえておきましょう。
と偉そうに色々言っていますが、僕自身専門家ではないので間違っているところがあるかもしれません。もし間違いに気づいたら、こっそり教えて頂けると助かります。
ちなみに、ここで使用した地図は「MapChart」というサイトで作成しました。カスタマイズ性抜群のツールです。レビュー記事も書いています。
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