こんにちは。めいげつです。

少数言語、あるいは消滅危機言語。世界には何千もの言語があると言われますが、そのうち3000の言語が消滅危機にあるとされます。

日本のアイヌ語やスカンジナヴィアのサーミ語などがその代表。大言語の話者である語学オタクとしてはロマンをそそられる響きではございますが、言語そのものやその話者にとっては非常に深刻な問題です。

消滅危機にある少数言語を保護するために、各地では様々な施策がとられています。今回はそういった施策の1つである、言語の巣についてです。

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少数言語と消滅危機言語

bibianagonzalez / Pixabay

世界には、7000もの言語があると言われます。統計によって、または言語そのものの定義によってその数は大幅に上下しますが、何千という単位での言語が存在しているというのはコンセンサスのようです。

その中で国の公用語の地位を得ているのは極少数に過ぎません。それ以外の言語は、公的地位がない少数言語か、そもそも話者の絶対数の少ない消滅危機言語に分けられます。この2つは完全にイコールではありません。

少数言語(Minority languages)は、まあ読んで字のごとく、ある地域の中でマイノリティである話者集団の言語のこと。

代表的なところでは、カナダにおけるフランス語、イギリスにおけるウェールズ語、日本のアイヌ語などがあげられます。

特にヨーロッパでは、少数言語はヨーロッパ地方言語・少数言語憲章(European Charter for Regional or Minority Languages)で保護が義務づけられています。

ただこの憲章では公的地位を持つ言語は除外されるので、アイルランド語などがほぼされないといった問題はあるのですが。

対して、消滅危機言語とは、その名が示す通り話者数が非常に少なく、話者が完全にいなくなる(=言語の消滅)恐れのある言語のことを言います。

こちらは少数言語のうち話者があまりに少ないため、より緊急の保護活動が必要となっています。

先に挙げたアイヌ語は少数言語であるとともに消滅危機言語であるいい例。他の有名な例ではオーストラリアのアボリジニ諸語や、アメリカのハワイ語でしょうか。これらは全てその国の中では少数言語もあります。

つまり消滅危機言語は必ず少数言語ではあるけども、その逆は必ずしも正しくない、というわけですね(カナダのフランス語は今のところ消滅の危機にない)。

ユネスコが発表したUNESCO Atlas of the World’s Languages in Dangerでは、消滅危機言語の消滅危険性は以下の5つのレベルに分けられています。

  • 「脆弱(Vulnerable)」
  • 「危険(Definitely Endangered)」
  • 「重大な危険(Severely Endangered)」
  • 「極めて深刻(Critically Endangered)」
  • 「消滅(Extinct)」

消滅してしまっては危険度もへったくれもないので、「消滅危険性」のレベルとしては実質4ついったところでしょうか。

ともあれ言語の「消滅」を防ぐために、各地で様々な施策がとられています。今回紹介する「言語の巣」も、主に消滅危機言語の保護と復興を目的にした活動になります。

言語の巣とは?

鳥の巣
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消滅危機にある言語を救うためには、話者を増やすことが不可欠。学習者が増えるのもいいですが、できれば母語話者(ネイティブ)を増やしたいところ。

そんな中で始まったのが「言語の巣(Language Nest)」というプロジェクト。子どもに少数言語での教育をさせることで、消滅危機にある言語を次世代へ受け継いでいこうというもの。

これはいわゆる子どもへのイマ―ジョン教育で、保育園か同様の施設で、ターゲットとなる消滅危機言語「で」勉強をしたり様々なアクティビティをさせます。

子どもたちは保育園内では少数言語を、そしてその外では多数派言語を話すことになり、上手くいけば少数言語と多数派言語のバイリンガルに育つわけです。

こうして子どもたちが現地次の世代にその言語の話者を育てることで、消滅危機にある言語を絶滅から救おうという取り組みなのです。

次からは、具体的な例を見ていきましょう。

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ニュージーランドのマオリ語の例

cmccarthy2001 / Pixabay

ニュージーランドで話される少数言語、マオリ語。ニュージーランドに欧米人が進出する前から、先住民のマオリが話していたポリネシア系の言語です。

「言語の巣」という保育園で子どもへのイマージョン教育を施し、言語を次の世代へ稀有証するという試みを最初に行ったのは、マオリ語の運動家たちでした。

「言語の巣」の英語名Language Nestは、実はマオリ語のKōhanga reoの訳語。

マオリ語の現在の状況は「脆弱(Vulnerable)」(危険度レベルでは一番下)にとどまっていますが、「言語の巣」が始まった1980年代までには、マオリ語の話者は著しく減っていたようです。

ニュージーランドで最初の「言語の巣」は、二人のマオリの年長者によってウェリントン地方にあるワイヌイオマタ(Wainuiomata)で始まりました。

ワイヌイオマタでの取り組みは非常に功を奏したようで、その後「言語の巣」の数は増え続け、10年後の1994年にはニュージーランド全体で800にもなったそうです。初等教育や中等教育を行うKara kaupapa Maoriも設立されました。]

Kōhanga reoでの様子はYouTube上にもいくつか動画が挙がっています。そのうちの1つがこちら。

子どもたちが和気あいあいとマオリ語であいさつをしたりしていますね。

マオリ語の「言語の巣」Kōhanga reoは、現在は1994年当時に比べて数は減ったもの、460もの「言語の巣」が運営されています。

こうした「言語の巣」はニュージーランドでのマオリ語復興を受けて、世界中に広がっています。次からはアメリカとヨーロッパの一例を見ていきます。

アメリカ・オジブウェ―語の例

アメリカでも、マオリ語の復興活動と同様の取り組みが行われています。

アメリカでは非常に多数の言語が話されていることと思いますが、有名な少数言語としては先住民のネイティヴ・アメリカンの諸言語でしょう。

アメリカ先住民の言語はいくつもありますが、ここで扱うのはオジブウェ―語(Ojibwe)という言語です。オジブワ語(Ojibwa)とも呼ばれるよう。

オジブワ語(Ojibwa language)

アルゴンキン=ワカシュ語族に属する言語で、アメリカ北部とカナダ南部で話される。別名チペワ語。話しては2万5000人以上で、アメリカインディアン諸語のなかでは有力な部類に属する。

『ブリタニカ国際大百科事典 小項目電子版』より一部抜粋 ©Britannica Japan, Co., Ltd.

アメリカとカナダにまたがる五大湖の周辺で話されるオジブウェー語。その中にもいくつか方言があるようで、ユネスコはオジブウェ―語(Ojibwe)、北東オジブウェ―語(Northwestern Ojibwe)、北オジブウェ―語(Northern Ojibwe)、そして東オジブウェ―語(Eastern Ojibwe)の4つに分けています。

ユネスコによれば、その内東オジブウェー語の状況は、「極めて深刻(Critically Endangered、消滅の1つ手前)」とされています(先ほどの引用文と少し矛盾する気もしますが)。

そこで時制代のオジブウェー語話者を育てるために、オジブウェー語の「言語の巣」(リンク切れ)が2009年にミネソタ・ダルース大学(University of Minnesota Duluth)にて始まりました。

オジブウェー語の「言語の巣」保育園では子どもたちは数字や色の名前などの基本的な概念や、文学や数学などの教科を全てオジブウェー語を通して学習します。

また教室内のアクティビティだけでなくフィールドトリップも盛んなようで、近隣の美術館や自然センターへの遠足も頻繁にしているようです。

こちらはミネソタ・ダルース大学ではなく別の場所オジブウェー語の「言語の巣」ですが、オジブウェー語保育のようすがわかるビデオあがありましたので貼っておきます。

オジブウェー語の「言語の巣」はまだ始まったばかりで成果のほどは分かりませんが、彼らの活動が実を結ぶと良いですね。

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フィンランド・イナリ・サーミ語の例

最後に北ヨーロッパのサーミ語の例を見てみましょう。

ヨーロッパの北にあるスカンジナビア半島の北部には、サーミ人という民族が暮らしています。サーミ人はEU地域唯一の先住民族で、フィンランド語に近いウラル語族フィン・ウゴル語派の言語を話します。

サーミご【サーミ語】

ラップ語とも。スカンジナビア半島北部に居住する5万から7万人のサーミ人のうち約3万~4万人が使用する。フィンランド語と近く、フィン・ウゴル語派に属す。9方言に分かれ、うち最大の方言はノルウェー, フィンランドでは地方公用語として広く用いられる。話者の大部分は各国国語とサーミ語の二言語併用者。

『百科事典マイペディア 電子辞書版』より抜粋 ©Hitachi Systems & Sercices, Ltd.

こちらの引用テキストにもある通りサーミ語は9つの方言に分かれていて、それぞれの相互理解は難しいそう。

フィンランド国内では、その9つの方言のうち3つの北サーミ語、イナリ・サーミ語、スコルト・サーミ語が話されています。ここではイナリ・サーミ語の例を見ていきます。

イナリ・サーミ語はフィンランドのラップランド北西のイナリ市を中心に話されています。エスノローグによれば話者が300人ほどしかいない言語で、消滅危機言語の1つです。ユネスコの分類では「重大な危険(Severely Endangered)」という状況にあります。

そしてイナリ・サーミ語を守るために、1986年に設立されたイナリ・サーミ語協会(Anarâškielâ servi)が、1997年から「言語の巣」プロジェクトとして保育園でのイナリ・サーミ語の教育を始めました。

現在イナリ・サーミ語協会は3つの「言語の巣」がを運営していて、うち2つがイナリ、1つが隣のイヴァロという町にあります。

イナリ・サーミ語の「言語の巣」保育園のようすがYouTubeにあがっていたので見てみましょう。音声はイナリ・サーミ語と一部フィンランド語、英語字幕付きです。

イナリ・サーミ語保育では大人は基本的にイナリ・サーミ語を話すなど公式にはモノリンガルな環境ですが、実際には多少フィンランド語とのバイリンガルな状況になっているようです(実際に動画の中でも、クマのTシャツを着た子がフィンランド語を話しています)。

保育園では本を読んだり、机を囲んで何かのアクティビティをしているようですね。

フィンランドでのサーミ語保護の運動はこのイナリ・サーミ語の保育園だけではなく、北サーミ語やスコルト・サーミ語の保育園もあるようです。

また市町村レベルでは北サーミ語の権利が保障されていたり、国レベルではフィンランド国営放送(Yle)のサーミ語のニュースラジオがあったりと様々な活動を行っています。

以上、今回は消滅危機言語を次世代へと受け継いでいく「言語の巣」という取り組みを紹介しました。

参考文献・ウェブサイト

Anarâškielâ servi ry. Retrieved from https://anaraskielaservi.fi/.

The Endangered Language Project. Retrieved from http://www.endangeredlanguages.com/.

Council of Europe. European Charter for Regional or Minority Languages. https://www.coe.int/en/web/european-charter-regional-or-minority-languages

Kvensk Institutt. Retrieved from http://www.kvenskinstitutt.no/sprak/om-minoritetssprak/kielipesa/.

McQuillan-Hofmann, K. (2014, May) Associate Professor Jill Doerfler and Colleagues Support UMD’s Enweyang Ojibwe Language Nest. University of Minnesota Duluth. Retrieved from http://www.d.umn.edu/external-affairs/homepage/14/ojibwelanguage.html.

Te Kōhanga Reo National Trust. Retrieved from https://www.kohanga.ac.nz/.

Thomson, R. (2005). Celebrating New Zealand’s first kohanga reo – 150 Years of News. https://www.stuff.co.nz/dominion-post/news/hutt-valley/73945639/null

UNESCO. UNESCO Atlas of the World’s Languages in Danger. http://www.unesco.org/languages-atlas/en/atlasmap.html

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