150冊突破◆読書好きへ贈る、岩波文庫収録の色別おすすめ古典作品

Googleの検索窓で「岩波文庫」と打つと、「岩波文庫 100冊」という候補が出てきます。

岩波書店も公式で「岩波文庫の100冊」というキャンペーンを打っていたようで、岩波文庫を100冊読むということはある種の基準になっているよう。

僕は今までに読んだ岩波文庫収録作品の冊数が、100冊どころか150冊を超えてしまいました。今もその記録は更新中です。

(もっとも全て「通読」したくらいだし、何なら古典は何度も読むべきものなので冊数はあまり自慢にはならないんだけど)

岩波文庫に収められているのは、どれも有名な古典作品ばかり。こうした古典を読むことで、今ブームの「教養」というのも少しは身についていくと思います。

さてこの記事では、岩波文庫を150冊読んだ僕が、岩波文庫に収録されているなかで個人的におすすめする古典作品を紹介します。

  • 古典作品にトライしてみたい
  • 岩波文庫のおすすめを知りたい
  • 岩波文庫でも読みやすい本を知りたい

という人向けに長々と書きました。読みやすいものからディープなものまで古今東西色々ですよー。

<記事は広告の後にも続きます>

岩波文庫を読まくろうと思ったきっかけ

※この部分は純粋な自分語りなので、興味ない人は「ここで紹介する本について」まで飛ばして頂いて構いません※

読書好きという方でなくとも、書店に行ったことがある人は、岩波文庫の少しおカタい、何となく近づきがたそうな装丁を見たことがあるかと思います。

ベージュを基本として、赤や青、緑、黄にラベルわけされた文庫がずらーっと並んでいる感じ。アカデミックではあるものの、少し古臭そうな感じ。

この見た目だけでもちょっと敬遠しちゃう人は多いかも。実際、僕もそうでしたので。

それに岩波文庫が収録しているのは、純文学や西洋哲学に代表されるようなムズカしそうなものばかり。

そんな僕が岩波文庫を読みまくろうと思ったきっかけというのが3つありまして、

  1. 「世界史で学んだ本を読みまくりたい」と思い立った
  2. 「外題学者」というワードに軽くショックを受けた
  3. フォルケホイスコーレの「生きた言葉での学び」に対して、「死んだ言葉」を読みつくしてやろうと思ったこと

1つは「世界史で学んだ本を読みまくりたい」と思い立ったこと。

僕は大学受験の時、世界史選択でした。世界史ではおもに文化史のところで、文学や哲学、宗教書のタイトルを著者とセットで覚えます(ダンテの『神曲』とか、カーリダーサの『シャクンタラー』とか)。

こうした本は世界的な古典で著名なものが多いです。そして岩波文庫はこうした古典を多く収録しているのでピッタリだったのです。

もっとも、有名な古典は新潮文庫や講談社(学術)文庫なんかにもあるので、特別岩波文庫にこだわる必要はないんですが。

古典というのは現代の世界に多大な影響を残しているものばかりので、「タイトルだけ知っていて中身はロクに知らない」というのはもったいないなと思ったのです。

それが2つ目の理由に繋がってきます。

それで2つ目の理由は、「外題学者」という言葉を知ったこと。

「外題学者」というのは、

書籍の名目だけ知つて、その内容に精通して居ない者のことをいふ。芝居の外題だけ知つて居て、その筋内容を知らぬ者の意から来たものである。本屋学者ともいふ。

外題学者(げだいがくしゃ)の意味や使い方 Weblio辞書

「外題学問」という言い方もあるようです。たぶんこっちのほうがポピュラー。

〘名〙 いろいろの書物の名前だけは知っているが、その内容を知らないうわべだけの学問をあざけっていう語。

外題学問とは – コトバンク

世界史の本を読みたいなーとぼんやり思っていたそのタイミングで、この言葉を知ったのです。

「まさに俺のことじゃねえか」と。

もちろん世界史の授業で、特に哲学なんかでは「誰々がなになにを提唱してこういう影響を(誰々に)与えた」というのは学ぶんですよ。

ただ、肝心の書物の中身は知らない。ちょっと前にも書いたことですが、なんかそれって勿体ないなと。

哲学書に限らず、文学もしかりです。文学はよけいに、内容を読んだことがあることが重要になりますよね。

僕が大学受験で名目だけ知つた書籍がたくさん収められている岩波文庫は、まさに外題学問からの脱却を試みていた僕には最適だったわけです。

3つ目はまた言葉関連ですが、前の2つとは独立してます。

デンマークにあるフォルケホイスコーレという学校はご存知でしょうか? 

フォルケホイスコーレは、全寮制の学校です。生徒だけでなく、先生も同じ学校の中に暮らし、年齢や国籍が異なる仲間として同じ時間を過ごします。学校生活を通じて「自分が何者であるのか」を知り、社会は多様な他者との関係で成り立っていることを体感していきます。

フォルケホイスコーレとは | IFAS(アイファス)

フォルケホイスコーレでは、ディスカッション主体の授業形式が古くから用いられており、生徒はバラバラな意見を統合させる民主主義的解決の方法を自然に学びます。朝礼やリビンググループと呼ばれる生徒同士の集まりから、授業からうまれる様々なプロジェクトにいたるまで、常に他者との対話をとても大切にします。

フォルケホイスコーレとは | IFAS(アイファス)

僕はひそかにこのフォルケホイスコーレに将来行ってみたい思ってまして。

そこでフォルケホイスコーレを紹介するブログや体験記を読んでいたのですが、あるブログ記事でフォルケホイスコーレの理念の1つとして紹介されていたのが、

「死んだ言葉よりも生きた言葉」ということ。上の2つ目の引用に当てはまりますね。

「死んだ言葉」とはおそらく書物などに書かれた言葉のことでしょう。特に古典。

対して生きた言葉というのは今生きている人が発する言葉ですね。ようはソクラテスの如く対話を通して学んでいくと。

このブログ記事、名前も失念したせいでちゃんと引用できず書いた人には大変申し訳ないんですが、これがけっこう刺さりまして。

「じゃあ今くらいは、死んだ言葉で学びまくってやろうじゃないか」と思い立ち、いっそう読書に励むことになったのです。方向性が真逆なんですけれどね。

ここで紹介する本について

さて、前の項目での自分語りをすっ飛ばした人のために、ここではどういった本を紹介するかを簡潔にまとめておきます。

まずは僕が岩波文庫収録の古典を読んだきっかけが「世界史で出てきた本を読みまくろう」と思い立ったことなので、ここで紹介するのは西洋モノの本が多いです。

帯の色別では、青(思想や哲学、宗教など)をいちばん多く読みました。なので青帯に分類される本が多くなってます。

また「岩波文庫収録作品」と銘打っているので、中には岩波文庫で読んでいないもの(特に日本文学とか)もあります。その場合は読んだ出版社のものも併せて紹介しています。

圧倒的読書体験。僕の珠玉の5冊

宮沢賢治『銀河鉄道の夜』

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まるで夢に出てくるような、不思議な不思議な世界を描き出す童話作家・宮沢賢治の童話集。

何を隠そう、この『銀河鉄道の夜』は僕が人生で初めて読んだ文庫本です(最初に読んだのは岩波じゃなくて新潮文庫だったけど)。

そういう縁もあって、この本に描かれた情景を、最初に読んで何年も何年も経た今ですら時折思い出します。

たとえば、ジョバンニが牛乳を買いに行くときの街の風景。山中に現れた料理店の恐ろしい廊下。入場券がわりに出した黄金のトマトをはじかれる瞬間(これは新潮版に収録)。

当時小さい子どもだった僕は頭に「?」を浮かべながら読んでいたのをよく思い出す。ちょっと現実離れし過ぎていてクラクラしそうな感じ。

今思うと本当に不思議な読書体験だった。

最初に読んだのは新潮文庫だったけど、収録作品が違うので岩波文庫版も読んでみました。好きな人は両方読んでおくと良いと思います。

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ダンテ『新曲』

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とりあえずこれだけは言わせて欲しい。この本はすごいです。

この本には宇宙が詰まっています。冗談じゃなくて。当時のキリスト教の宇宙観が描かれた壮大な詩がここにある。

(それでいて、当時の聖職者や政治家なんかを散々にこき下ろしたりしている)

その世界観に終始圧倒されまくります。こんな読書体験は中々得られるものじゃない、と断言できるくらい。ダンテが「ルネサンス最大の詩人」みたいに呼ばれるのも、全く異論なし。

『プロ倫』と並んで、僕が宗教とかキリスト教的な「神」について興味関心をかき立てられた本で、そこから日本の宗教モノにも広がっていきました。

ダンテの『新曲』は三部作。

  • 地獄編
  • 煉獄編
  • 天国編

の三巻で構成されてます(うち煉獄については、初期のキリスト教にはなかったそうです。プロテスタントでも認められてない)。

ちなみに三部作の最終巻・天国編は最難関。めっちゃくちゃ難しくて、解説なしに理解は困難。なにも、アリストテレス哲学とか中世の時代に広まった哲学や宗教の用語とか色々出てくるから。

「世界史で出てきた本を読みまくろう」と思って読んだのがこれで、おそらくインパクトとしては一番。

「世界史の本」で何がおすすめかと聞かれたら、ほぼ間違いなくこの『神曲』を推します。まあ相手のニーズにもよるけど。

この記事は「岩波文庫収録作品」を紹介する記事なので岩波文庫を貼ったけど、文語なのでまあ読みにくいです。

読みやすい新訳が講談社学術文庫から出てる(解説の量がものすごい)ので、そっちがいいでしょう。僕もさすがに文語はきつくて講談社のほうにしました。

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ヘッセ『シッダルタ』

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ドイツに生まれ、スイスに暮らしたノーベル賞作家ヘルマン・ヘッセの作品。悟りを得る前の釈迦の人生を描いたものです。

これはヘッセ作品の中では中~後期の作品で、彼がスリランカやインドネシアを回ったアジア紀行での体験がベースになっています(とはいってもアジア紀行の十数年後のことだけど)。

この本には、人生が詰まってる」。そんな風に感じさせてくれるような、主人公シッダールタの内面の動きが描かれている。

人間みんな人生で経験することは違うんだけど、人生とはこういうものなのだろうなと深い感慨に包まれる作品。

これ以上書くと蛇足にしかならない気がするので、感想はこの辺にしておきます。

「この本は絶対に手元に置いておこう」と思ったくらい、読んだ時の衝撃は大きかったです。

しかしわたしはただの渡し守にすぎない、そしてわたしの仕事は人を舟に乗せてこの河を渡すことだけです。たくさんの人、何千の人をわたしは渡した、その人たちの誰にとっても、私の河は、旅の途中に或る一つの邪魔者にすぎなかった。(中略)しかし幾千人のうちの何人、ほんのわずかな人たち、四人か五人かにとっては、この河はもう邪魔者ではなくなった、その人たちはこの河の声を聴いた、その人たちはこの河に耳を傾けた、そして、河はその人たちにとって神聖な存在となったのだ

ヘッセ作 手塚富雄訳『シッダルタ』145-146ページ

そしてさらに彼は思い出した。遠い昔、若い彼は苦行者の群れに投ずる許しを得ようとしてどんなに父を強制したか。自分は父とどんな別れ方をしたか、そしてそういう別れをしたまま自分がついに家に帰ることがなかったことを。自分の父も自分ゆえに、いま自分が自分の子のために受けている苦しみと同じ苦しみを苦しんだのではないか。自分の父は、とうの昔、ただ独りで、おのが子に再びめぐり合うことなく死んだのではないか。

ヘッセ作 手塚富雄訳『シッダルタ』179ページ

ヘッセといえば『車輪の下』が有名(もちろんこっちもすごく良い)。国語の教科書で『クジャクヤママユ(少年の日の思い出)』を読んだ人も多いかと(ラストのあのエーミールの態度を妙に覚えてます)。

だけど、個人的にはこの『シッダルタ』のほうが好きです。

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自分が色々と難しく考えがちな(内省をし過ぎる)性格なので、ひたすら人の内面を描いた作品ってのが性に合ってるのかな。

ヘッセの作品には遍歴の物語が多いです。自分は旅が好き(といっても今まで観光客的な旅行しかしてないけど)なので、そういった部分にも心に響いたのかも。

ちなみにこの記事は岩波文庫を紹介する記事なので岩波版を紹介してますが、どっちかというと僕は新潮文庫の高橋健二訳が好きです。

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ロック『統治二論』

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社会契約の三傑(僕が勝手に呼んでるだけ)が一人、ジョン・ロックの『統治二論』。

人によっては『市民政府論』という名前で覚えている人もいるでしょう。イギリスの名誉革命、アメリカ独立宣言、ひいてはフランス革命にも影響を与えた本。

実は『市民政府論』はこの『統治二論』の後半の部分で、前半の「統治について」を合わせた2つの論文が本書を構成しています(岩波文庫も少し前までは『市民政府論』として出してました)。

分厚さ、白帯という地味な見た目、『統治二論』というおカタい名前でつい尻込みしそうですが、中身はけっこう分かりやすい。

まず前半(『市民政府論』じゃないほう)では、ヘブライ語聖書などの広範な知識をフル活用して、ロバート・フィルマーという人の王権神授説をコテンパンにこき下ろしています。

これが18世紀版クリティカル・シンキングか……! という感じ。まさに快刀乱麻の勢いで次々と論破していきます。

そして後半、『市民政論』の部分。自然権と自然法(世界史でおなじみ)をベースに、統治者の権力は市民の合意に基づくということが論述されていきます。

「ロックといえば抵抗権(革命権)」と覚えた人もいるでしょう。ちゃんとありますよ。己の生存のためには当然の権利ですね。

ホッブズの『リヴァイアサン』のかなり厳格でラディカルな感じに比べて、なんだか優しさも伝わってきます。特に抵抗権のところなんてそう。

社会契約論は現在の政府のベースになっている考え方(のはず)なので、後半の市民政府論の部分だけでも読んでおくといいと思います。

社会契約の本にはほかに『リヴァイアサン』とルソーの『社会契約論』がありますが、ホッブズは最初人間の感情などの分析から入るのでちょっと退屈してしまう。

ルソーとロックは個人的に同じくらい面白い。じゃあ前半部分の論破がスカッとするのと、アメリカ独立宣言への影響から『統治二論』を選びました。

バルガス=リョサ『密林の語り部』

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ペルーのノーベル賞作家、マリオ・バルガス=リョサの作品。原作は1987年出版と、「古典」と呼ぶには「古」さが足りないかもしれません。

でも岩波文庫に収録されているということで古典扱いしても問題はないかなと。

この本は世界史には出てきませんが、岩波文庫の巻末の「岩波文庫の最新刊」で偶然見つけ、タイトルに惹かれて手に取りました。

現代文明から「遠く離れた」世界を舞台にした、ものすごく不思議な読書体験を得られる本。とにかく「素晴らしい作品」の一言です。

ペルーの都市部で大学生をしていたものの、アマゾン密林で暮らす「マチゲンガ族」の「語り部」となった男性と、彼の消息を追う友人である主人公の物語が相互に繰り返されます。

その「語り部」をメインに置いたパートはもの凄い不思議と神秘に包まれていて、正直ついていけない部分もある。

けれど、普通に生活していたら見ることのできない世界を覗けたような気がする(それを「完全に理解した」と言うのは、ある種傲慢なのかも知れませんが)。ええ、正直にいうと「理解できない」。

だが、彼らはいつもやってきて、いつまでも出ていこうとしなかった。これは今では明らかなことだ。間違いのないことである。彼らはやってきて、私は出ていく。しかし、それは悪いことだろうか? いや、決して悪いことではない。というのは、それが運命だからだ。タスリンチ。私たちは放浪するものではないだろうか? マシュコやプナルーナに感謝しなければならない。またビラコチャにも。彼らは私たちが暮らしているところに侵入してくる。私たちに義務を果たさせる。もし彼らがいなければ、私たちは堕落してしまうだろう。おそらく太陽は落ちる。世界は真っ暗になり、この地はカシリのものになってしまうだろう。人間はいなくなり、寒さに支配されてしまうだろう≫

バルガス=リョサ『密林の語り部』189-190ページ

隅から隅まで現代文明に入り浸っている僕らからしたら、想像もできない世界が広がっています。

この話じたいはフィクションだそうだけど、そんなことはどうでもいい。こうした世界観に浸れるのは、やはり読書の醍醐味ですね。

マチゲンガ族は実在するようで、どうやら個人名を持たない民族なのだそう(!)。

僕は趣味でブログをやっていますが、ブロガーでもライターでも記者でも、「何かを書く者」として、「書くこととはどういうことか」などを考えさせられる場面もありました。

ちなみにバルガス=リョサは、御年85歳。彼のように、御存命のうちに作品が岩波文庫に収められるのはかなりレアです。

僕が知っている範囲では谷川俊太郎(岩波文庫に自選の詩集がある)、言語学者のノーム・チョムスキー、そしてこのバルガス=リョサくらい。

それだけ、彼の文学に価値があるということでしょうか。まあ『密林の語り部』を読めば、納得がいきます。

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岩波文庫で読みやすいものは?

前の項目では僕にとって一番印象に残った岩波文庫を5冊紹介しました。

岩波文庫といえば、100年前、それどころか1000年以上前に書かれたような古典を多くそろえているレーベルです。

学問の大家が外国語から翻訳したがゆえの文章のカタさ、何百年も前の作品ゆえの文化や常識の違いなどあって、読みにくい作品がかなりたくさん。

それでも「岩波文庫を読んでみたいけど、できれば読みやすいものがいい」というニーズもあるかと思い、岩波文庫の中で比較的読みやすいものをいくつか載せておきます。

比較的有名な作品を、思想系を中心に紹介します。

ただ「読みやすい」とはいっても、あくまで古典です。決してスラスラ読めるようなものではないので注意。ある程度腰をすえてトライしましょう。

セネカ『生の短さについて』『怒りについて』(青)

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世界史のローマ史でおなじみ、ネロ帝の家庭教師セネカの著書。どちらかというと『生の短さについて』の方が有名ですが、『怒りについて』もおすすめです。

内容はというと、現代のビジネス書や自己啓発本を彷彿とさせる内容。というか、たぶん自己啓発本の元ネタなんじゃないか。

そういった本を何冊か読むより、この2冊を読んだ方が良いのでは?

シュリーマン『古代への情熱』(青)

トロイア遺跡やミケーネ遺跡を発掘したシュリーマンの自伝。発掘のようすやロシア等での行商のようす、外国語の学び方(シュリーマンは語学の天才だったそう)など、彼の半生が語られます。

吉野源三郎『君たちはどう生きるか』(青)

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マンガになってベストセラーとなったあの本です。刊行は1937年とほぼ100年前ながら、童話といった体でとても読みやすく、それでいて深くて読みごたえがあります。色々と考えさせられる内容。

アラン『幸福論』(青)

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おそらく「幸福論」と名のつくものでは一番有名なアランの『幸福論』。ほかにもラッセルやヒルティのものがありますが、ラッセルのものは少し小難しい印象(ヒルティは未読)。

内村鑑三『後世への最大遺物』(青)

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日本の思想界に多大な影響をもたらした(らしい)内村鑑三の講義を収録したもの。若干仰々しいタイトルでわかりにくいかと思えばそんなことなく、講義録なのでとても読みやすいです。

内容については本書に譲りますが、「偉大な生」はおろか「幸福な生」とか「善く生きる」とは何かを考えるのにとても参考になります。

プラトン『メノン』(青)

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有名な(?)「想起説」が出てくるプラトン初期の対話編。対話編一本で構成される一冊としてはおそらく一番短いかと(もちろん岩波文庫のなかで、です)。

プラトンの入門としても最適との評判もあるそうなので、『ソクラテスの弁明・クリトン』とあわせてどうぞ。

トマス・モア『ユートピア』(赤)

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「楽園」という意味でよく使われる「ユートピア」という単語、実は最初に使われたのがこの本。「ユートピア」は「どこにもない場所」という意味だそう。

この本の中では、何だかディストピアな雰囲気漂うユートピアが語られます。

ちなみに、モアと仲の良かったエラスムスの『痴愚神礼讃』(これは中公文庫)は、けっこう退屈でした。なんかすみません。全部退屈ってわけではなかったんだけど。

マルクス・アウレーリウス『自省録』(青)

ローマ帝国の五賢帝が最後・哲人皇帝ことマルクス・アウレリウス・アントニヌスが激務の最中にしたためた「自省」の言葉が集められた本。

彼はストア派の哲学者だったらしく、決して自分を称揚せず淡々と自分を律する内省の言葉が並びます。

不安の多い現代は彼の治世と全く同じではないけど、得られるものはかなりあるかと。僕にもお気に入りの文章がいくつかあります。

ペイン『コモン・センス』(白)

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アメリカ独立への機運を一気に高めたとされるパンフレット。世界史で覚えた人も多いのでは。

白帯は小難しいものが多いけど、これはそんなに長くないし、それに分かりやすい。しかし、イギリス王室が散々にこき下ろされていて笑えてくる。

ミル『自由論』(白)

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19世紀の政治哲学者ジョン・スチュアート・ミルの著書。僕らがふわっとした考えを抱きがりな「自由」について突っ込んだ議論をしたものです。

こちらも社会契約系の本と並んで現代の民主主義のベースになっているように思います。

ちなみにミルには『功利主義』『大学教育について』といった著作もあります。どちらも岩波文庫収録。

いかがでしょうか? 世界史を学んだ人にはお馴染みのタイトルも結構あるのではないでしょうか。

その他・岩波文庫収録の色別(&分野別)おすすめ古典作品

青(思想)

プラトン『饗宴』『パイドン』

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プラトンは文庫で出ているものはほぼ全て読みました(だって西洋哲学の原点ですからね)。

『国家』はイデア論など大事な部分がまとまっているけど長いし、『ソクラテスの弁明・クリトン』は定番すぎるので、この『饗宴』『パイドン』か『テアイテトス』あたりをおすすめしようかと。

『饗宴』と『パイドン』 の両方にイデア論が登場。前者は性について複数人が語り合う場で、後者ではソクラテスの死の場面という非常なドラマチックな展開。

哲学というと難しいイメージだけど(実際難しいけど)、プラトンの場合は対話形式になっていて意外と読みやすい(理解しやすいとは言ってない)。ソクラテスがいささか牽強付会なのは認めざるをえない。

ルソー『社会契約論』

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この記事の上の方で僕が「社会契約の三傑」と呼んだ一人、ルソーの代表的な著書。

今の民主主義のベースになっている本。 記事の上の方で 紹介したロックの『統治二論』と合わせて読むと理解が深まります。

青(仏教とか宗教関連)

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世界でも影響力の強いユダヤ教とキリスト教(とイスラム教もかな)の原点。教養を身につけるという意味では、この『創世記』など聖書に勝る本はないかもれない。

正直に言うと、内容はかなり退屈。でも、読んでおいて絶対に損はないと思う。今後ずっと日本で暮らすとしても、この本で出てくるシーンに出会うことはきっとあるはず。

岩波文庫では『出エジプト記』『ヨブ記』(これは未読)も出てます。あとは新約の『福音書』『使徒言行録』か。

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新約聖書も文庫で出てるくらいは読んだ方がいいかもですね。僕は福音書だけ読みました。ちなみに全訳もありますが、ちょっとそこまでは無理かも笑

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日本の古典でも、宗教関連の著作は青帯に収録されています。

この2冊は、『新曲』『プロ倫』を読んで日本の宗教に興味が湧き、手に取ってみました。

『往生要集』は長くてウンザリするので万人に受け入れられるってわけにはいかないかも。なので、まずは『歎異抄』を読むのがおすすめ。

そんなに長くないし、悪人正機説のあたりが結構面白かったりする。

ただ『往生要集』も、それこそ万人に受け入れられている「地獄」のイメージってここから来てるらしい(まあこれが元ネタじゃなくても、間違いなくここを通ってる)。

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やはり宗教って奥が深いですね。上の2冊はどちらも浄土宗の系統にあるものなので、こんどは『臨済録』みたいな禅宗関係も読んでみようかしら。僕の地元は伝統的に禅寺が多いので。

仏教への興味が高じて、こういった本も読んでみました。

『ブッダのことば-スッタニパータ』は、仏教でも最古の啓典で、釈迦ことゴータマ・シッダールタが生きていた時代に最も近いのだそう。

立派な仏閣も、地獄もない、なんだか原始的な仏教の姿がここにあります。犀の角のようにただ独り歩め。

井筒俊彦『イスラーム文化 – その根底にあるもの』

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キリスト教&ユダヤ教→仏教ときたら、次に来るのは世界三大宗教の最後・イスラム教ですね。最後っていうのもアレだけど。

この本の読後の知的高揚感も半端ない。井筒俊彦といえば日本を代表するすごい学者で、宗教だけでなく語学にも天才的に秀でていて、言語オタクな僕が尊敬する御仁。

岩波文庫ではコーランも出ている(同じ訳者)ので、時間があれば読んでみようっと。

『北斎 富嶽三十六景』

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実は、岩波文庫のなかには画集もある(僕が知っている中ではこれだけ)。

北斎の『富嶽三十六景』の46作品(36作品じゃないんかい)を見開きで、作品ごとに解説付き。『神奈川沖浪裏』『凱風快晴』だけじゃない富嶽三十六景が楽しめます。

青(言語)

サピア『言語―ことばの研究序説』

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「サピア=ウォーフの仮説」で知られる言語学者エドワード・サピアの著書。音声学から文法、文学まで幅広く扱った言語学の入門書。

ロシア語とか中国語みたいなメジャー言語はもちろん、彼の主な研究分野であるアメリカ先住民の言語(しかも複数)までカバーする博覧強記ぶり。

いちおう入門書ってことになっているし、まあ内容としても(かなり包括的な)入門書なんだけれど、いかんせん分厚い(400ページ超え)し、かなり専門的なので言語学の知識が全くない人には厳しいかも。

著者の圧倒的な知識量を体感したい人におすすめ。

橋本信吉『古代日本語の音韻に就いて』

日本語と言えば、母音は「ア・イ・ウ・エ・オ」の5つだというのが決まり文句ですよね。

そのつながりで、「母音が5つしかないスペイン語は簡単だ」なんて言っている人もいたり(その真偽はさておき)。

……と今でこそ定着している5母音だけど、この著者の橋本氏によれば、古代の日本語には母音が7つもあったとか!

なにも、今では「エ」段と「イ」段に使われた万葉仮名のうち、明らかに混同して用いられない文字のグループがあるようで。著者はそれを、日本語には2つ母音が多くあったと解釈してます。

もちろん話はそうシンプルじゃないんですが、まあ詳しくは本書にて。

今から1000年以上前に話されていた古代日本語のロマンを感じたい方におすすめ。講義を文字起こししたものなので難しくないし。

赤(海外文学)

海外文学のお勧め作品はさくたんありあますよね。僕が改めてリストを作る必要もないくらい。

なので、あんまり他のリストに載らないような、ちょっとニッチめの本でも紹介しようかなと思います。

オマル・ハイヤーム『ルバイヤート』

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世界史でちょろっとでてきた、中世ペルシャの詩人オマル・ハイヤーム。

タイトル、著者の名前、「中世ペルシャ」という響きのとっつきにくさとは裏腹に、すごく読みやすくて、あまりイスラム教っぽさも感じない作品。

リョンロット『カレワラ』

いちおうこのブログはフィンランド留学とフィンランド語ブログとしてスタートしたので、これは紹介しておかねば。日本で読んでいる人もあまりいなさそうだし。

『カレワラ』は、著者エリアス・リョンロート(ここではリョンロット)がカレリア地方を巡って収集した口承文学を、一つの物語にまとめ上げたもの。

ロシア帝国支配下の19世紀半ばに出版され、フィンランド人の独立への機運を一層高めた作品

王侯や将軍たちがドンパチする『イリアス』などとは違い、何というか素朴な雰囲気のある一風変わった神話です。

岩波文庫版はかなり骨太なので、読みやすいリライト版を読むのも手。

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『カレワラ』については、読んだ感想を別記事に書いています▼

『対訳 ディキンソン詩集』

思わぬところで見つかった掘り出し物。

正直僕はディキンソンのデの字も知らないほど関心がなかったものの、読書好きの友人がおすすめしてくれたので勢いで手に取ったら正解だった。

岩波文庫の「アメリカ詩人選」や「イギリス詩人選」の良いところは英語の原文も読めることですね。解説も詳しいので英語学習者にはうれしいです。

A Wounded deer ―― leaps highest
I’ve heard the Hunter tell ――
‘Tis but the Ecstacy of death ――
And then the Brake is still !

手負いの鹿は――もっとも高く飛び上がる――
猟師がそう語るのを聞いたことがある――
それはまさに死の法悦――
それから草むらは静まり返る!

亀井俊介編『対訳 ディキンソン詩集』岩波文庫52-53ページより

チェーホフ『桜の園』

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ロシア文学というと『罪と罰』『戦争と平和』みたいに何巻にも及ぶ大長編のイメージがあるけれど、チェーホフは別(長いのもあるけど)。

『桜の園』は、少し悲しいけれど、ほのかな希望も感じさせる短編。

知里幸恵『アイヌ神謡集』

当時17歳だったアイヌの女性が記録・翻訳した、アイヌに伝わる口承文学ユーカラを集めたもの。なんとアイヌ語と日本語の対訳(!)。

人と自然が密接に関わる世界観がとても美しい。なんだか心が洗われるような読後感。

古代ギリシャ&古代ローマものは意外と面白い

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ウェルギリウス『アエネーイス』は、オデュッセイアみたいに物語の大半が放浪(と戦い)なので、旅好きの僕は意外と楽しめた。

(↑岩波文庫は高い&古いのしかなかったので安価のを貼りました)

陥落したトロイアの王子アエネーアースが、イタリアに漂着して国を興し、ローマ人たちの先祖になるという話。『神曲』にも影響与えたらしい(ウェルギリウス本人も登場するし)。

ちなみに分厚い新訳も出てる。鈍器としても使えそうな大きさ&重さ。でも読みやすい。

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ギリシャ喜劇や悲劇は、独特の言い回しとか構成のせいで分かりにくいことが多々あるけど、意外と面白かったりする。

アリストパネスの『雲』には、なんとあのソクラテスが登場。しかも僕らがイメージする彼でなく、横柄なソフィストとして。

喜劇なのでかなり誇張だの何だのが入ってるだろうけど、まあそれも含めて彼やソフィストがどういう風に思われてたのかわかる貴重な一冊(まあ実際、ソクラテスもソフィストも似たような者に思えたんでしょうな)。

アリストパネスといえば、アイスランドで1975年代に行われた女性たちによるストライキが、この『女の平和』と比べられたこともあるのだそう。

『オイディプス王』は、フロイトの「エディプス・コンプレックス」の由来らしい(エディプス=オイディプス)。やっぱり古代の物語は、色々なところに影響があるんだなあ。

ちなみにエウリピデスもいくつか読んだけど、岩波文庫収録のものは未読なのでここで紹介はしません。

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プラトンとかを読んでいるとイリアスなんかをこれでもかというくらい引用されているので、「読んでみたら何かあるんだろう」と思って読んだものの、正直「うーん???」という感じ。

まあ確かに壮大で、英雄的な死に方を是とする古代ギリシア人のメンタリティが彼らの琴線に触れることもあったのかも知れない。でも正直よくわからない。

イリアスは面白いところと退屈すぎるところの差が激しい。そして長い。

でも教養本としては聖書に匹敵するくらいでしょうね。あと『オデュッセイア』もね。ちなみにオデュッセイアのほうが断然面白いです。

黄(日本文学)

近代以前の日本文学を収めている黄色帯は、基本的に原文と注釈のみで、学校で古文を学んだだけの(僕のような)人には難しいかも。

日本の古典は角川ソフィア文庫や、同じく角川のレーベル「ビギナーズ・クラシックス」、講談社学術文庫などから全訳や対訳(=原文&現代語訳)が出ています。

青帯のところで紹介した『歎異抄』も、講談社学術文庫でしたね。普通に読書して内容を知りたいなら、そっちの方がおすすめ。

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緑(現代日本文学)

冒頭にも書きましたが、僕は「世界史で出てきた本を読みまくろう」と思ったのがきっかけで岩波文庫を読み漁り始めたので、あんまり緑帯は読んでません。

まあそれに現代日本文学はみなさんご自分のリストがあると思うので、一応読んだものを適当に上げておきます。

ちなみに、現代日本文学については特に岩波文庫にこだわる必要はありません。

有島武郎『一房の葡萄』

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こちらは童話。有島武郎ってなんだか他の文豪に比べて影が薄くて何となく難しそうなイメージがある(※個人の印象)のですが、この本は童話ってだけあってかなり読みやすい。

そして薄い。薄いけどその中にお話が5編ほど入っており1つ1つはとても短いです。日本文学のとっかかりにはいいかも。

小林多喜二『蟹工船 一九二八・三・一五』

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日本のプロレタリア文学の代表的な作品。とにかくエグい。最初から最後まで余すところなくエグい。最後までエグさたっぷり。

そんなエグいのを紹介してどうすんのよという話ですが、まあこういう本もあるんだよという感じです。

歌集や詩集など

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岩波文庫の詩集や歌集は、とくに日本人作者のものはこれでもかっていうくらいたくさんの詩や句が詰め込まれています。もはや全集なんじゃないかと思うくらい。

『中原中也詩集』(汚れつちまつた略も入ってます)も読みました。彼のファンは結構多いけど、僕には正直あまりピンと来なかった。

ここで紹介した啄木詩集は良かったと思います。一握の砂と悲しき玩具の両方とそれを上回る分量の補遺で構成。補遺は難易度が爆上がりします。

白(法律・政治・経済ほか)

スミス『国富論』

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こちらも世界史でおなじみ、アダム・スミスの『国富論』。(古典派)経済学の原点ともいえる本。『諸国民の富』という名前でも知られていますね。

経済学の土台になった著作なので、読んで損はないかと。ただ4巻構成でけっこう内容が細かいので、読むのは大変です。

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講談社学術文庫から新訳も出てます。こっちは2巻構成(岩波文庫を紹介すると言いながら読んだのはこっちです汗)

エンゲルス『空想より科学へ』

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『共産党宣言』と迷ったけど、『空想より科学へ』の方が面白いのでこっちをおすすめ。マルクス&エンゲルス登場以前の社会主義の変遷がよくわかります。

共産主義関連はマルクスの『経済学・哲学草稿』なんかもあるけど、そっちは激ムズだった。

オルテガ・イ・ガセット『大衆の反逆』

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スペインの哲学者オルテガが、近現代に登場した怪物じみた「大衆」の特徴を論じた著作。この洞察が結構鋭くて、100年前の本とは思えないくらい。現代にもよーく当てはまるテーマなのかと。

ヴェーバー『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』

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おそらく皆さん一度は聞いたことがあるであろう、ヴェーバーの『プロ倫』。プロテスタントの考え方が資本主義を推し進めるエンジンになった課程を解き明かした本(ってことで合ってるよね?)。

これを読みながら、そういえばプロテスタントの修道院って無かったな、と思ったり。

ただしこの本はめっぽう難しく、通読どころかこれだけで理解するのはとうてい無理だと思うので、色々解説とかを見てみるのをおすすめ(僕は2回挫折して3回目でようやく通読)。

ちくま新書から出ている『社会学の名著30』と『宗教学の名著30』に、この『プロ倫』を扱った項目があって、そんなに長くないので目を通してみると良いかと。

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ちなみにこのプロ倫、エーリヒ・フロムの『自由からの逃走』でも言及されています。こっちも面白いので読んでみるといいかも(どちらが先でもいいと思います)。ナチス政権下のドイツを中心とした論考。

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岩波文庫を100冊+α読んだ結果は?

というわけで、僕は岩波文庫を150冊通読しました。

岩波文庫に収録されているのはほとんど、いや多分全部が有名な古典作品

そして、「教養を得る」というのは、半分くらい古典を読むことと重なってる部分がある

ので、教養を得るという意味では古典≒岩波文庫に入っているタイトルを読む意義は大きいかなと思います。

たとえば文学の古典作品には絵画のモチーフになっているものが多いので、美術館などで絵画作品を観た時にピンと来たりなど。

社会契約系の本(『リヴァイアサン』、『統治二論』、『社会契約論』)のように、なかには割と役に立ちそうなものもある。

読書で人生観が変わるって言うのは言い過ぎだけど、それでも自分の考えに多少なりとも影響を及ぼした本が何冊かあったのも事実。

とはいっても正直、そこまで「教養がついた!」っていう実感はないです。全くないわけではないけれど、期待したほどではないというか。

自分はまだまだ知らないことだらけ、読んだことのない本だらけというのを痛感しているところです。

それに、古典というのは「一回通して読んだ。はい終わり。次ーっ」というものではありません。

もちろん色々な古典をを読むのもいいけれど、やっぱり折に触れて読み返すこと。人生の違うステージだったり、知識や経験が増えたときに何度でも繰り返し味わうものなんでしょうね。

以上、岩波文庫収録のおすすめ古典作品でした。岩波文庫にはまだまだ読みたい作品がてんこ盛りなので、どんどん読んでいきます。リストも随時更新します。

これからは赤や緑、黄色帯をもっと読んでいこうかな。

最後に、ここで紹介した本を一覧にしておきます。

  • 僕の珠玉の5冊
    • 宮沢賢治『銀河鉄道の夜』(青)
    • ダンテ『新曲』(赤)
    • ヘッセ『シッダルタ』(赤)
    • ロック『統治二論』(白)
    • バルガス=リョサ『密林の語り部』(赤)
  • 読みやすい岩波文庫
    • セネカ『生の短さについて』『怒りについて』(青)
    • シュリーマン『古代への情熱』(青)
    • 吉野源三郎『君たちはどう生きるか』(青)
    • アラン『幸福論』(青)
    • 内村鑑三『後世への最大遺物』(青)
    • プラトン『メノン』(青)
    • トマス・モア『ユートピア』(赤)
    • マルクス・アウレーリウス『自省録』(青)
    • ペイン『コモン・センス』(白)
    • ミル『自由論』(白)
  • 青帯
    • プラトン『饗宴』
    • プラトン『パイドン』
    • ルソー『社会契約論』
    • 『旧約聖書 創世記』
    • 『新約聖書 福音書』
    • 『歎異抄』
    • 源信『往生要集』
    • 『ブッダのことば-スッタニパータ』
    • 井筒俊彦『イスラーム文化 – その根底にあるもの』『北斎 富嶽三十六景』
    • 『北斎 富嶽三十六景』
    • サピア『言語―ことばの研究序説』
    • 橋本信吉『古代日本語の音韻に就いて』
  • 赤帯
    • オマル・ハイヤーム『ルバイヤート』
    • リョンロット『カレワラ』
    • 『対訳 ディキンソン詩集』
    • チェーホフ『桜の園』
    • 知里幸恵『アイヌ神謡集』
    • ウェルギリウス『アエネイス』
    • アリストパネス『女の平和』
    • ソポクレス『オイディプス王』
    • ホメロス『イリアス』
  • 黄帯
    • 鴨長明『方丈記』※角川ソフィア文庫
    • 松尾芭蕉『おくのほそ道』※角川ソフィア文庫ビギナーズ・クラシックス
    • 紀貫之『土佐日記』※角川ソフィア文庫ビギナーズ・クラシックス
  • 緑帯
    • 有島武郎『一房の葡萄』
    • 小林多喜二『蟹工船 一九二八・三・一五』
    • 『新編 啄木歌集』
  • 白帯
    • スミス『国富論』
    • エンゲルス『空想より科学へ』
    • オルテガ・イ・ガセット『大衆の反逆』
    • ヴェーバー『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』

しかし、ブックリスト作るのって楽しいですね。また似たようなリストを作ってみようかなと思います。

それでは、長々と失礼しました。

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僕らのあらゆる常識をぶっ壊す言語の世界へ『ピダハン』感想

3件のコメント

  1. JS

    岩波文庫の表紙の色にこのような意味があるのは知りませんでした。
    あまり気にしてなかったのですが、そういえばそうだなと思いました。
    今ちょうど、カントの「啓蒙とはなにか」を読んでいるのですが、
    全く意味が分かりません。でも、ところどころ「そうかも…」と思うところがあり、読み続けています。
    めいげつさんが読んだ本で、まったくあるいはほとんど意味がわからなかったけどとりあえず読んだみたいな本はありますか?

    • めいげつ

      JSさんこんにちは。
      岩波文庫の帯の分類に関しては、公式サイト(https://www.iwanami.co.jp/search/)のプルダウンに一覧があります。
      ただ、「青(仏教とか宗教関連)」や「青(言語)」など僕が勝手にグループ分けしたものもあるのでご注意を笑

      カントを読んでいらっしゃるのですね。「ところどころ「そうかも…」と思うところ」があるそうですが、カントの著作はとんでもない難易度なのを考えればそれだけで上々だと思います。

      意味が分からなかった本は今のところ全て途中で放り投げてます笑(ごめんなさい)
      それこそカントの『永遠平和のために』を読んでみたことがありましたが、薄いからとナメてかかったところ本当に意味が分からず挫折した、なんてこともあります(その上内容もほとんど覚えていない始末)。
      あとはキルケゴールの『死に至る病』も通読できませんでしたね。
      思想系以外では二葉亭四迷の『浮雲』ですね。数ページも読めなかった記憶があります。
      まあともあれ、投げ出すにも食わず嫌いせずに一度は実際に読んでみた方が良いのかな、とは思いますね。

  2. JS

    返信ありがとうございます。
    いくつか読み切らなかった本があったのですね
    でもそれ以外はほとんど読んでいると考えるとすごい数です
    買ったからには読み切りたいと気負ったり、自分はこういうジャンルが好きだから
    (と思い込んで)と最初から探す範囲を狭めたり、そういうことはせずに
    とりあえず目についた本を買ってみるという感じでよさそうです
    それでもどんな本でもというとあまりにも広がりすぎなので、
    今回のように岩波文庫のなかから適当に一冊ぐらいがよさそうです。
    本との付き合いかたは一人ひとり全く違うと思いますが、
    それでもこうしてお話しできるのはありがたいことです。

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