2020年6月、日本と世界との文化交流を促進する団体・国際交流基金(Japan Foundation)が、海外の日本語教育に関するレポートの最新版を発表しました。
このレポートでは、
- 海外で日本語教育を行っている現地機関の数
- 国別の日本語学習者の数
- 日本語を母語とする教師の数や比率
などといった点を簡潔に見やすく分かりやすく報告しています。前回のレポートについても、当ブログでその一部をシェアしました。2018年度版の速報版についても少しだけ触れました。
今回はそのレポートの最新版の内容を一部シェアします。日本語は、海外ではどれくらい人気なのでしょうか?
※本レポートは2018(平成30)年の調査に基づくものなので、データは当時のものになります。
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日本語教育が行われている国は過去最多。学習者数も増加
レポートによると、日本語教育が行われていることが確認できた国は、過去最多の142の国と地域にわたります。日本語が世界中で学ばれていると言っても過言ではないでしょう。
ちなみにこの調査で対象としているのは「語学としての日本語教育を実施している可能性のある機関」で、こういった機関の存在が確認できたかということ。
前回(2015年)の調査では137ヶ国・地域でしたので、5ポイント増加したことになります。
調査が開始された1979年には70の国と地域で確認されているのみだったので、長い目で見れば大幅な増加と見ることが出来ます。ただここ20年ほどは伸びが鈍化している様子。
日本語学習者数は385万1774人。おそらく対象となっているのは「語学としての日本語教育を実施している可能性のある機関」で学んでいる人で、独習者ば数に含まれないようです。
となると、「独学者も含めた日本語学習者の数」であれば、もっと多いだろうと推測できますね。
海外の日本語学習者数は2009年の調査以来高い水準で推移していますが、2012年に最多の398万5669人を記録した後は伸び悩んでいる模様。
日本語を学ぶ理由で多いのは?
海外の日本語学習者たちは、なぜ日本語を勉強しているのでしょうか?
一番多い理由は、「マンガ・アニメ・J-POP・ファッション等への興味」がトップ。66%の学生がこの理由を挙げているようです。
次に多かったのが「日本語そのものへの興味」で61.4%、3番目に多かったのが「歴史・文学・芸術等への関心」で52.4%。日本の文化的な底力は侮れませんね。
この3つが高い傾向は初等から高等教育段階にかけて共通していますが、高等教育の段階(日本の大学や大学院に相当)では「日本への留学」が3番目に来ています。
小学校~高校までは微妙なものの、大学生レベルとなると日本への留学が現実味を帯びてくるといったことでしょうか。
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日本語学習者の多い国・地域は?
日本語教育を行っている機関、日本語教師、日本語学習者の数どれにおいても、一番多いのが東アジアで、2番目が東南アジア。
やはり地理的・文化的・経済的にも距離が近い地域では需要が高いようです。国内総生産では中国に抜かれて久しいとはいえ、まだ世界第3位の経済大国ですからね。
世界で日本語学習者の数が最も多い5ヶ国は、
- 中国(100万4625人)
- インドネシア(70万9479人)
- 韓国(53万1511人)
- オーストラリア(40万5175人)
- タイ(18万4962人)
……でした。
1位の中国は、全体の26.1%と4分の1強を占めています。また1~3位を合わせれば全体の半数以上に登ります。
中国、オーストラリア、タイについては学習者数が前回の調査時に比べて増えているようですが、韓国とインドネシアでは減少したようです。
上位10ヶ国はほとんどが東アジアや東南アジアの国・地域ですが、4位のオーストラリアや米国(8位)も食い込んできています。オーストラリアは英語圏では最大の学習者数を抱えている国。
また、ヨーロッパ諸国は少ないかというと必ずしもそうではなく、フランスは15位に来ていますし、ドイツは18位についています。イタリア(26位)やポーランド(31位)も世界的に見れば高順位といえるでしょう。
日本語学習者が増えた国と減った国
海外の日本語学習者の数は、過去最多とはいえないものの、前回2015年の調査よりは少し増加しました(19万6750人増)。また、長い目で見てもかなり増えています(1979年最初の調査時の約30倍)。
とはいえ、1ヶ国単位ではずっと増加するわけではなく、日本語学習者が増えていたり、また減っている国も存在します。
前回2015年の調査時と比べて、日本語学習者増加の割合が一番高かったのはベトナム。ベトナムの方は技術研修生(かなり闇が深い制度ですが)で日本へ来る人も多い国ですね。続いて中国、オーストラリア。
東南アジアは経済成長が著しい地域で、日本語学習者が増加した国々にはこういった東南アジア諸国の面々が目立ちますね。
……と思ったものの、学習者数が減少した国・地域を見てみれば、そこには東南アジア人口最大を誇るインドネシアの姿が。そしてそれ以上に台湾でも学習者数が減少しています。減少の大きかった国第3位は韓国。
このグラフに登場しているのはどこも日本語学習者数ランキングで上に来る国・地域ばかりです。絶対値が多いほど、その増減の幅は大きいのでしょうか。
また、日本語教育が行われているのが確認できなかった国、そして前は確認されていなかったものの新たに確認された国があります。
例えば、東南アジアの東ティモール、中米のベリーズ、ヨーロッパのモンテネグロなど、あわせて5ヶ国で新たに日本語教育の実施が確認されました。
その一方で、フィジー、モナコ、アフガニスタン、シリアの4ヶ国では以前行われていたはずの日本語教育の実施が確認されませんでした。最後の2ヶ国は政情不安が主な理由でしょうが、フィジーとモナコに関してはどうなのでしょう……?
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参考:国別学習者数ランキング
では最後に、日本語を学んでいる人が多い国のランキング上位30ヶ国を載せておきます。
- 中国(100万4625人)
- インドネシア(70万9479人)
- 韓国(53万1511人)
- オーストラリア(40万5175人)
- タイ(18万4962人)
- ベトナム(17万4521人)
- 台湾(17万519人)
- 米国(16万6905人)
- フィリピン(5万1530人)
- マレーシア(3万9247人)
- インド(3万8100人)
- ミャンマー(3万5600人)
- ニュージーランド(3万2764人)
- ブラジル(2万6157人)
- 香港(2万4558人)
- フランス(2万4150人)
- 英国(2万40人)
- カナダ(1万9489人)
- ドイツ(1万5465人)
- メキシコ(1万3673人)
- シンガポール(1万2300人)
- ロシア(1万1764人)
- モンゴル(1万1755人)
- スペイン(8495人)
- スリランカ(8454人)
- イタリア(7831人)
- カンボジア(5419人)
- ネパール(5326人)
- アルゼンチン(5054人)
- バングラデシュ(4801人)
中国は人口規模を考えると、経済成長著しく今や世界第2位の経済大国とはいえ、まだまだ日本語学習者の数は増えそうですね。日本とも距離が近いだけに、総人口費は韓国と同じくらいの割合にはなるでしょうか。
しかし総人口を考えると、韓国とオーストラリアの日本語人気はかなり根強いですね。特にオーストラリアの人口が韓国の半分程度ということを鑑みると尚更です。
まとめ:伸び悩んでるけど日本語はまだまだ人気
もちろん人気とはいえ、英語などの大言語と比べてしまえばそうでもない、という結論になりそうですけれども。
また、グラフを見る限りでは2009年までは右肩上がりだったものの、その後は高止まりの状態が続いているといえます。
今回は、国際交流基金の最新版(2018年)のレポートを紹介しました。本レポートは、国際交流基金のウェブサイトからPDFファイルをダウンロードできます。
参考文献
- 国際交流基金 (2015) 『海外の日本語教育の現状 2015年度 日本語教育機関調査より』
- 国際交流基金 (2018) 『海外の日本語教育の現状 2018年度 日本語教育機関調査より』
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