※(2020/12/29追記)最新版の記事を公開しました。最新版(2018年調査)のレポートにもとづいた記事は↓をご覧ください※
海外での日本語教育について、こんなレポートを見つけました。
海外での日本語教育の現状を、国際交流基金がまとめたもの。日本語教育を行っている現地機関の数や日本語学習者の数などを、簡潔に見やすく分かりやすく報告しています。
このレポートが結構面白かったので、世界で日本語がどれくらい学ばれているのか、日本語学習者が一番増えたのはどの国かなどの部分をシェアします。
日本語は、海外ではどれくらい人気なのでしょうか。
※本レポートは2015(平成27)年に公開されたもので、情報は当時のものになります。
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海外の日本語学習者は前回比では減少
国際交流基金(The Japan Foundation)は、1972年に日本と世界の文化交流の促進を目的に設立された団体。
日本語教師の派遣や研修を行っているほか、日本語弁論大会などのイベントの催行、日本語能力試験(JLPT)世界中の都市で実施したりしています。
今や世界137ヶ国で学ばれている日本語。
今回参考にした国際交流基金のデータによれば、日本語学習者数は長い目で見れば増えているようですが、2015年は2012年と比べて減少した様子。2012年は398万5669人で2015年は365万5024人なのでおよそ33万人の減少ということになります。
減少した理由については詳細は不明ですが、主な要因についてこの記事の後半、日本語学習者が減少した国のセクションで少し触れようかと思います。
ちなみに、日本国内の日本語学習者数などについては文化庁がデータをまとめているようです。
日本語学習者の多い国は?
学習者数や日本語教育を実施している機関の数では中国と韓国、そしてインドネシアが三強のようです。
日本との地理的な距離を考えれば、この辺は特に驚くことでもありません。中韓はそもそも日本の隣国ですし(日本語がネイティブ並みの中国人をこれまで何人見たことか)、インドネシアの人口は東南アジアでも最大規模ですし。
機関数と学習者数のグラフで中韓が逆転しているのが少し面白いですね。
少し意外な点を挙げるとすれば、上記の三強に次いでオーストラリアが4位にランクインしていること。
このレポートを少しページをめくれば、オーストラリアは人口10万人あたりの日本語学習者数が最も多いのだとか。個人的にオーストラリアで日本語が多くの人に学ばれている、というイメージがあまりなかったので驚きました。
あとは日本語教育機関数において韓国が中国の上を行っていること。いくら韓国と日本が近いとはいえ、中国は人口が桁違いに多いですから……それだけ韓国の日本語教育は充実しているのでしょうか。
この後は米国、台湾、タイと続きますが、このあたりは別段驚くことではないように感じます。
台湾とタイはやはり距離的にも文化的にも近いですし(おまけに親日国家の筆頭! とよく聞きますし)、アメリカにはたくさんの日本人が住んでいますし。
……まあ、アメリカはどの言語をとっても上位にランクインしてくる気もしますがね。
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日本語教育機関が新たに確認された国とされなかった国
レポートによれば、日本語教育は世界137の国と地域で行われており、日本語教育を実施している機関の数は1万6179にも登るそう。
その中には、2015年の報告で新たに日本語教育の実施が確認された国と、逆に確認できなかった国があります。
日本語教育が行われているのが確認された国はオセアニア(キリバス、フィジー)、南欧(ボスニア・ヘルツェゴビナ、マケドニア)、アフリカ(アルジェリア、ザンビア)とアフガニスタンで7ヶ国。
一方、確認できなかった国はこれもオセアニアのソロモン諸島、カリブ海のハイチとプエルトリコ、イエメン、アフリカの2ヶ国(ギニア、中央アフリカ)で6ヶ国。差し引きで1ヶ国増加です。
日本語教育の実施が確認できないのには様々な理由があると思いますが、真っ先に思いつくのは教師がいなくなったということでしょう。
このレポートでは学習者が確認できない要因については詳細は触れられていませんが、日本語をネットや本などで独学で学んでいる人は含んでいないそうなので(そもそもこのレポート自体教育「機関」を調べたものなので)、この理由が最も大きいのかと愚考します。
特にイエメンなんてこの頃内戦が続いているのでその影響は計り知れないでしょうね……。中央アフリカも外務省によれば危険度レベル4で、テロ事件も多発しているらしく、日本人教師が現地で日本語を教えるどころの話ではなさそうです。
それ以外の理由は正直思いつきません。日本語は英語やスペイン語などの大言語に比べればマイナーな言語ですが、それでもさすがに学んでいる人がゼロという国があるとは考えにくいかなーと思いますし……
日本語学習者が増えた国と減った国。意外な国がトップに。
さてここで本題。
前回の調査(2012年)と比べ日本語学習者数が増えた国と減った国。先ほども触れましたが、学習者数自体は長い目で見ればかなり増えているのですが(この約40年間で28.7倍)、2012年と比べると30万人も減っている様子。
それでも、86の国と地域で日本語学習者の増加が確認されたようです。その中で最も学習者が増えているのは、意外な国でした。
日本語を学んでいる人が最も増加したのはオーストラリア。英語圏の国では最大の日本語学習者数を誇り、全体では第4位にまで上り詰めています。
個人的には英語圏で日本語というイメージがあまりなかったのですが、日本に一番近い英語圏の国であることを考えれば納得かもしれません。
オーストラリアの次はタイ、ベトナム、フィリピンと続きます。東南アジアでの日本語人気はまだまだ根強いようです。
そしてオーストラリアを含む大洋州(オセアニア)は、東南アジアと並んで学習者の数に対して教師の数が圧倒的に少ない地域なのだそう。それでもなお、この2つの地域では日本語学習者の数がこれだけ増えていることから、日本語教師として新規参入の狙い目なのはこの2地域でしょう。
まあ3年前のデータなので、今とは違うところも多いでしょうが。
一方、日本語学習者が一番減っている国もまた意外や意外。日本語学習者数三強の国々(韓国、中国、インドネシア)がトップ3を飾っています。
日本語学習人口が多いと減少するときもまた大きいのでしょうか。それにしても、日本の隣国で日本語学習者が減ってしまっているのはちょっと悲しいことではあります。
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参考:国別学習者数ランキング
参考までに、日本語を学んでいる人が多い国のランキング上位20ヶ国を載せておきます。
- 1位……中国(95万3,283人)
- 2位……インドネシア(74万5,125人)
- 3位……韓国(55万6,237人)
- 4位……オーストラリア(35万7,348人)
- 5位……台湾(22万45人)
- 6位……タイ(17万3,817人)
- 7位……アメリカ合衆国(17万998人)
- 8位……ベトナム(6万4,863人)
- 9位……フィリピン(5万38人)
- 10位……マレーシア(3万3,224人)
- 11位……ニュージーランド(2万9,925人)
- 12位……インド(2万4,011人)
- 13位……ブラジル(2万2,993人)
- 14位……香港(2万2,613人)
- 15位……フランス(2万875人)
- 16位……イギリス(2万93人)
- 17位……カナダ(1万9,601人)
- 18位……ドイツ(1万3,256人)
- 19位……ミャンマー(1万1,301人)
- 20位……シンガポール(1万798人)
アジア・オセアニア勢強しですね。
中国と韓国、中国とインドネシアの人口差をかんがみると、1位たる中国と2位3位のインドネシア&韓国との学習者数の差は非常に小さいような気がします。
最後に:日本語は意外と海外で人気です
まあ人気とはいっても、英語などと比べてしまうとどうしても人気ではないように思えるのですが。
今回は国際交流基金の2015年のレポートを紹介しました。
個人的に印象的だったのが、オーストラリアでは日本語が人気なのに先生が少ないということ。これでは現地の日本語の先生も大変でしょうから、オーストラリアに留学する人はぜひボランティアとして日本語のクラスに参加してみると良いと思います。
ちなみに留学先での日本語のクラスでアシスタントすることにメリットは「大学留学するなら日本語ボランティアするべき理由」でまとめています。あわせてご覧ください。
レポートの全文はこちらからPDFファイルをダウンロードできます。 今回紹介したものは3年前のものなので、少し古く感じられるかもしれません。調査は3年ごとに行われるようなので、前回のレポートが公開されてから今年で3年、なので年末には最新のものが公開されるかもしれません。
→最新情報:国際交流基金のホームページによると、2018年に最新の調査が行われたようです。最新の調査結果は今年2019年中に公開されるようです。
果たして日本語を学習している人の数は増えているのでしょうか。期待できますね。公開されたら、真っ先に記事にしようと思います。
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【2018年速報版】海外の日本語学習者についての最新情報
先日、国際交流基金のウェブサイト上で2018年に行われた調査の速報版が公開されました。
そのデータによると、2018年度の日本語学習者数は3,846,773人。この記事で取り上げた2015年度よりも191,749人の増加が見られました。
それに伴い機関数と教師数もそれぞれ16,179→18,604(+2,425)、64,108人→77,128人(13,020人)と増加したようです。
この2018年度の調査で、新たにジンバブエ、東ティモール、ベリーズ、モザンビーク、モンテネグロの5カ国で日本語教育が行われていることが確認されました。また、ここでは割愛しますが、国別の日本語学習者数ランキングにも若干変化が見られました。
レポートの詳細は国際交流基金公式サイトの当該ページから、PDFファイルをダウンロードしてご確認ください。
参考文献
国際交流基金 (2015) 『海外の日本語教育の現状 2015年度 日本語教育機関調査より』
Header Image by B_Me / Pixabay
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