日本人の英語が伸びない理由の1つに、「ネイティブ向けの英文に触れない」ことが度々あげられます。日本人向けのリーディング教材を使うのも悪くはないのですが、非ネイティブが書いたものに終始していると、表現力の観点で頭打ちになってきます。
なら何を読めばいいのさと思うでしょう。お金を掛けたくない人もいるでしょう。でも身近なところにありますよ。ネット上にある無料の、質の高い英文を読めるウェブサイトが。
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ウィキペディアは最適なリーディング教材
ウィキペディアといえば、wikiという誰でも閲覧・編集可能なプラットフォームを使った百科事典。通称、「フリー百科事典」です。
日本語を母語として話す皆さんなら基本的に使うのは日本語版の「ウィキペディア」でしょう。ですが今回のテーマは英語版の「Wikipedia」(en.wikipedia.org)です。
ラテンアルファベットがぎっしりなのを見てウッとなる人もいるかもしれません(そのレベルだと英語版ウィキペディアを使うのは厳しいですけど)。
英語版ウィキペディアは、英語の学習にはかなり最適な教材なのです。その理由をざっと解説します。
理由①:ネットさえあればどこでも無料で読める
皆さんご存知だと思いますが、ウィキペディアは寄付によって運営が成り立っています。広告等も一切載っていません。
なのでウィキペディアの記事を読むのにお金払うことはおろか、会員登録すら必要ありません。英語の多読をもっとしたけどあまりお金を使えない……という方には朗報ですね。
しかもウィキペディアはオンライン上の百科事典。ネット上で全て完結しているので、インターネットに接続されてさえいればどこでも読むことができます。ペーパーバックの場合は嵩張るしものによっては重さもあるので、それに比べると外出先での利便性において大きな利点があります。
ただペーパーバックや電子書籍に劣る点は、ウィキペディアにはしおりを挟めないことでしょう。
理由②:圧倒的な情報量
唐突ですが、英語もできる人と日本語しかできない人では、触れられる情報の量に圧倒的な違いがあります。
インターネットに限っての話をすれば、情報の多くは英語で書かれており、日本語で書かれた情報と言うのはごくわずか。
ウィキペディア情報ですが、ウェブサイトのおよそ53.1%は英語で書かれており、日本語で書かれたウェブサイトは全体の3.6%に過ぎません(それでも他の言語に比べれば多い方ですがね)。ウェブサイトの数だけを見ても英語と日本語で10倍以上の差があるのです。
そして肝心のウィキペディアはどうかというと、記事の数では英語の記事が圧倒的1位の256万7509。2位のドイツ語に170万もの差をつけています。ちなみに日本語で書かれた記事数は52万3639で5位です(2019年1月時点)。
めちゃくちゃ専門的すぎる記事でなければ、基本的にどのコンテンツも非常に充実していて読みごたえがあります。1万語クラスのものはザラなので、がっつり読みたい人にもお勧めできます。
理由③:和英辞典代わりにも
我々日本語ネイティブは、自分たちが思っているよりもたくさんの単語を知っています。外国語を学習する人に比べ、ネイティブの「語彙力」って馬鹿にできません。
ウィキペディアは、私たちにとっては外国語である英語の「語彙力」増強にもお役立ちです。その辺歩いていると「そういえば○○って英語でなんていうんだろう?」と思うことってありませんか。
たとえば、一昔前テレビ関係で流行った「液晶」とか。
でも和英辞典を開くの面倒だなと思ったら、ググってウィキペディアを開いてみましょう。先にWeblioなどの和英辞典が出てくることもありますが、ウィキペディアの方が上に出てくることもあります。
そして左のメニューにあるEnglishをクリックすると、英語版のWikipediaが開きます。
「液晶」は、英語でLiquid Crystalでした。初めて知りました。漢字そのまんまですね。
でも、動物とか植物の名前で調べるとラテン語の学名で出てきたりするので、要注意です。
Hippaphaeって言われてもな……(よく見ればsea buckthornsと書いてあります。シーバックソーンはベリーのようなオレンジ色の果実です。おいしい)
あとは日本史や世界史の用語を調べてみても面白いですよね。世界史ならCrusadesとかとかAbsolute MonarchyとかThe Wars of the Rosesとか、お馴染みの用語を調べるだけでも楽しいです。
幕府を英語でshogunate、明治維新をMeiji Restorationというのは知らない人多いんじゃないかなあ。
ちなみに:Simple Englishという手もある
一度英語版のWikipediaを見て頂いた方は分かると思いますが、ウィキペディアの英語は結構レベルが高いです。レベルとしては中級者以上となるでしょう。
ですがご安心を。昨今の英語の広まりを感じ取ってか、ウィキペディアには「平易な英語」で書かれたウィキペディアがあります。Simple English Wikipediaです。
Simple English Wikipediaは英語の最頻出語1500語やイギリスの言語学者オグデン(C. Ogden)が提唱した「ベーシック・イングリッシュ」に載っている850語のみを使って書かれています。
つまり専門用語など難しい単語はほとんど出てきません。
そう聞くと何の勉強にもならなさそうだとの声が聞こえてきそうですが、まあ待ってください。
単語に制限がある中で様々な事象を説明するのは非常に難しいこと。少しでも難しい単語は使えないので、パラフレーズをする必要があります。
そして語彙が少ないのは学習者も同じこと。パラフレーズの仕方を学べば、知っている単語が少なくても表現力は格段に上がります。
こちら記事数は14万2024と通常の英語版ウィキペディアの18分の一程度ですが、最初の肩慣らしにはちょうど良いでしょう。単語の勉強と並行して読み進めて、ある程度単語力がついたら本家の英語版ウィキペディアにうつりましょう。
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英語版ウィキペディアの教材としての使い方
英語版ウィキペディアをどう使うか。
他の方も仰っていますが、ずばり興味のある記事を読むこと。読んでいて楽しいと思えるようなテーマの記事を読むこと。ただそれだけに尽きます。
それだけで良いんです。むしろ興味のない記事を読んでも面白くありませんし、面白くないとモチベーションが下がりますよね。
語学に限らず何でもそうですが、モチベーションがなくなったら終わりです。なので語学の肝心要であるモチベーションを尽きさせないためにも、自分の興味あること、読んでいて楽しいコンテンツを読んでいく必要があります。
我を忘れて読みふけるようになった頃には、英語のリーディングはかなり上達していることでしょう。僕はよく外国語や言語学、アニメの記事を読んだものです。
それと辞書を使うかどうかですが、これは人によります。辞書なんて使わず読みまくる人もいれば、1つ1つ知らない単語の意味を確かめつつ読む人もいます。
僕の場合は後者です。なぜかというと、知らない単語を読み飛ばしてしまうと、後々その意味が気になって気になって仕方がないし、後になって調べようと思ってもその頃には100%忘れているから。
これって勿体なくありませんか。せっかく自分の語彙を広げるチャンスなのにそれをみすみす逃すなんて。なので僕は知らない単語は一度ドラッグしてGoogle検索し、スパっと調べます。
そして必要であれば、単語帳アプリや電子辞書のヒストリーに登録します。こうやって時間をかけずに単語を調べられるのも、オンラインの利点ですね。
まあこればかりは人によりけりなので、辞書を引くやり方も引かないやり方も両方試してみてくださいね。
もちろん英語以外の言語も!
ウィキペディアには当然ですが他の言語のバージョンもあります(日本語版があるくらいですからね)。
フランス語、ドイツ語、ポーランド語(!)は日本語版よりも記事の数が多いですし、記事数では劣りますが他の言語も大体あります。
フランス語版ウィキペディア(Wikipédia)もかなり記事数が多いので、僕もフランス語の勉強のためにアニメの記事とかよく読んでいました。アニメのあらすじの項目って、地味に役立つんです。
以上、ウィキペディアの多読教材としての利点を紹介しました。英語のリーディングを鍛えたい時、ウィキペディアは意外と盲点になりがち。
すぐ書店で売っている教材とか、ペーパーバックとかKindle等の電子書籍に目が行ってしまうと思います。ウィキペディアは完全に無料で質の高い文章が読めるので、これを活用しない手はありません。
語学は楽しみながら、なるべくお金をかけずに勉強できると良いですよね。
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