フィンランド語の雪を表す11種類の単語

北の方にある雪がよく降る国の言葉には、雪に関する単語が多く存在するという話をよく耳にします。グリーンランドに住むイヌイットの言葉では何十何百もの単語を使い分けるという都市伝説的なものもありましたね。

フィンランドは世界でも高緯度にある雪国。フィンランド語にも、雪に関する単語はいくつもあります。今回の記事ではそのうちの雪の状態をさす単語を紹介します。

フィンランド語にはどんな言葉があるのでしょう。

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雪を表す単語たち

雪には、なんだか神秘的なイメージがありますよね。

雪を意味する外国語の単語は、英語ならスノウ(snow)、フランス語ならネージュ(neige)、イタリア語ならネーヴェ(neve)、ロシア語だとスニェク(снег)など、美しい響きや魅惑的な響きを持っているものが多いような気がします。

僕は日本語の「ゆき」という言葉も好きです。字面も響きもいい感じです。Yukiとアルファベットにするのもよし。

雪がちらちら舞い散る情景を表すのには、言語ごとに違ったやり方があります。

日本語では「雪が降る」と雪を主語にした言い方をしますし、英語ではsnow「雪が降る」という動詞を使ってIt’s snowing.のように形式主語itを使った言い方をしますよね。

フィンランド語で「雪が降る」は、Sataa lunta(サター ルンタ)といいます。sataaは雪や雨が降る時に使う動詞で、luntaは雪を意味するlumiが変化したもの。単数の分格という形です。

分格という形は、「決まった形や数量をもたない」というニュアンスのある形です。空から降る雪に決まった形や量はないので「分格」という形になります。

「分格」については「結局、何個あるの?「悪魔の言語」フィンランド語の格のまとめ」をご覧ください。

「雪が降る」という文ひとつとっても、日本語と英語とフィンランド語でそれぞれ言い方が違っていて面白いですね。

閑話休題。ではフィンランド語には、「雪」を表すどんな単語があるのでしょうか。見ていきましょう。

※特別明記されていない限り、フィンランド語の定義はSuomen Sanakirjaから、英語の定義はウィクショナリー英語版から引用したものです。

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フィンランド語で雪を表す11の単語

雪といえばこれ lumi(ルミ)

まずは基本的な単語から。

lumi(ルミ)は「雪」を意味する一番オーソドックスな単語で、普通に雪と言いたいときはこのlumiを使います。先ほどのSataa luntaやTykkään lumesta(雪が好き)などなど。

lumiは他の単語とくっついて別の単語を作ることができます。例えば初雪という意味のensilumi、スノーボードならlumilautailu(ルミラウタイル)、ケミ市に冬の間だけ現れる雪の城ルミリンナLumilinna(linnaは城塞)などなど。

lumiは万能過ぎるので、このリストでは〇〇lumiとかlumi〇〇といった合成語は載せていません。

「ルミ」。最も基本的な単語ながら、かわいいような、美しいような、なんだか魅惑的な響きがしませんか。

「ルンタ」にすると心なしかかわいさが半減するような気がしますが、「ルミ」なら白い毛の犬からデパートの名前まで様々なネーミングに使えそうな響きを持っていると思います。実際ルミっていう名前の日本人もいらっしゃいますし。

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純白の viti(ヴィティ)

viti

Vasta satanut hieno (pakkas)lumi

viti

freshly fallen white and dry snow

viti(ヴィティ)は、ちょうど降り積もったばかりの白くて細かい雪をさします。パウダースノーのようなもので雪玉も作れないくらいさらさらの雪です。

ちなみにこのvitiという単語、「真っ白な」を意味するvitivalkoinen(ヴィティヴァルコイネン)とうい単語にも使われています。英語で言うsnow whiteですね。

ちなみに白雪姫はlumikki(ルミッキ)と言います。

細やかな höyty(ホウテュ)

höyty

Hyvin pehmeä, ohut lumi

次はhöyty(ホウテュ)。フィンランド語独特の発音が難しい単語。とても柔らかい、細かい雪のこと。なんとなく先ほどのvitiと通じるものがある気がしますがどうなんでしょう。

別ソースによればこのhöytyという単語は方言らしいのですが、Suomi Sanakirjaには特に方言との記載がなかったので載せました。

荒れ狂う pyry(ピュリュ)、tuisku(トゥイスク)、myräkkä(ミュラッカ)

pyry(ピュリュ)、tuisku(トゥイスク)、myräkkä(ミュラッカ)は3つとも吹雪を意味します。強い風に乗った雪というところでしょうか。

冬のフィンランドでは雪がよく降り積もりますが、そこに強風が吹き荒れるともう大変です(マイナス14度で強風だと、外出て20秒で顔が真っ赤になりヒリヒリ痛みます)。

僕の個人的な話ですが、ラップランドのサーリセルカ近郊のカウニスパー(Kaunispää)に行ったときは死を覚悟するほどの猛吹雪でしたし、1月某日のヘルシンキで-14度で強風だった日には、外に出て30秒で顔が真っ赤になりました。

ちなみに、pyryは若い男子の名前でもよく見かけます。僕の友人でもいます。

あと、フィンランド人の歌手にアンッティ・トゥイスク(Antti Tuisku)という人もいますね。吹雪アンッティさんです。

吹雪が吹いていたサーリセルカの丘カウニスパー
サーリセルカ近郊の丘カウニスパー(Kaunispää)では吹雪が吹いていました

ぐしゃりとした loska(ロスカ)、sohjo(ソフヨ)、nuoska(ヌオスカ)、hyhmä(フュフマ)

loska(ロスカ)、sohjo(ソフヨ)、nuoska(ヌオスカ)、hyhmä(ヒュフマ)と単語が4つ並びましたが、これらは全て、地面に積もった水の混じった雪のこと。

あのぐちゃぐちゃした、踏むと気分の悪くなるあれ。英語でいうslushです。

秋のヘルシンキの中心部など、雪は降っても地表の温度が高い場所や、人通りの多い都市部だと雪がすぐこんな風になってしまうので嫌になりますね。さらに土が混ざって茶色くなっていると見た目もよろしくありません。

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要注意な polanne(ポランネ)、iljanne(イルヤンネ)

polanne

Kovaksi tallautunut tai pakkautunutlumi- tai jääharjanne tiessä tai muu sellainen, tai muuta sellaista

polanne

A hard ridge of snow on road

polanne(ポランネ)は、踏み固められたたりして硬くなってしまった雪や氷ですね。雪が積もった後にその雪が解け、また気温が下がってそれが凍ってしまうと起こります。

軽いアイスバーンみたいなものでしょう。こういう氷は滑りやすくて店頭の危険があるので注意が必要ですね。東京でも雪が降った数日後に起こる、踏むと店頭の危険性のある厄介なもの。雪はいいですがこういうのは勘弁です。

このpolanneという単語が使われ出したのは最近のことらしく、Yleの記事(フィンランド語)に解説が載っていました。

どうやら以前(60年くらい前)は気象学の専門用語でほとんど使われなかったようです。当時はiljanne(イルヤンネ)という単語の方が日常的に使われていたそう。

飛ばされて積もった雪 kinos(キノス)、nietos(ニエトス)

kinos

Pitkänomainen, varsinkin tuulen synnyttämä lumikasauma, nietos.

kinos

A drift of snow brought together by wind

続いてはkinos(キノス)とnietos(ニエトス)。

前者は、僕が『ムーミン谷の冬』を読んでいた時(ちなみにまだ読み終わってません笑)に度々登場していた単語です。

kinosとnietosは両方とも、地面に降り積もった雪が風によって積みあがったものです。ここにはkinosの定義しか載せていませんが、nietosと調べると「kinosを見ろ」と言われるので類義語としてまとめました。

画像検索してみると、砂漠でもよく見られる細長く小さな山のような形を成しているものが出てきます。

日本の北陸地方で有名な雪の壁もkinosと呼ばれるようです。kinosはlumikinosとも呼ばれます。

「キノス」。ちょっと強そうな名前です。

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積もった雪の深みにはまる hanki(ハンキ)

hanki

Maata peittävä paksu lumivaippa, kinokset

hanki

snow blanket

hanki(ハンキ)は、地面を覆った分厚い雪を意味する単語。

冬に森の中や草原に繰り出すと見られますね。誤って深い所に落ちてしまうと身動きが取れなくなってしまうので、hankiのある所では充分に注意しましょう。

僕も1月にラップランドのとある国立公園を歩いたときは、深い雪に足をとられないか冷や冷やしました。

かわいい且つ美しい tykky(テュッキュ)

tykkylumi

puun latvukseen ja oksille kasaantunut raskas lumikerrostuma

『Wiktionary』フィンランド語版「tykkylumi」より抜粋

tykky

snow and rime that accumulates on tree branches and any solid structures in certain climatic conditions.

tykky(テュッキュ)。tykkylumiともいいます。木の枝や葉の上に分厚く降り積もった雪をさす単語です。

tykkyは冬のフィンランドの美しい名物の一つ。いくつかの気象条件や地理的条件をクリアすると表れます(僕は見られなかった……!)。

英語でcrown snow loadという言い方があるようですがウィクショナリーによればネイティブはあまり使わないよーとのこと。

宮城県の蔵王で見られる有名な樹氷も、tykkyと呼んで良いと思われます。

木々の上に雪がこんもり積もった樹氷(tykky)。北フィンランドでよくみられる
adege / Pixabay

↑これがtykky。

tykkyという単語は響きも字面も樹氷そのもののイメージもいい感じにフィンランド感が出ているので、様々なネーミングに使えそうですね!

冬の猛威 laviini(ラヴィーニ)

laviini(ラヴィーニ)は雪崩のこと。雪山で起こる恐ろしい危険の一つ。大きいものに巻き込まれてしまうと抜け出すのはほぼ不可能。それなのになんだかかわいい響きを持つ単語ですね。

フィンランド語辞典のページには雪崩を意味する「lumivyöry(ルミヴュオリュ)」、ウィクショナリーには「snow avaranche」と書いてあるだけだったので、わざわざ引用はしませんでした。

なんだかおしゃれな響きのlaviiniよりも、lumivyöryの方がなんだか
雪崩っぽい強く恐ろしいような響きがある気がします。

雪にはまだなれぬ räntä(ランタ)

räntä

Satava vetinen lumi

räntä

sleet; rain and snow mixed

räntä(ランタ)は(みぞれ)です。水と混じった雪の事ですね。

正直このリストに載せるかどうか迷ったのですが、フィランド語辞書の定義に「lumi」としっかり書いてあったので載せることにしました。

霙と言えば、子どもの頃雪が降ったと思えば実は霙で、残念に思ったことが何度もあります。神奈川県でも海に近い地域に住んでいる僕としては、降り積もる雪っていうのはとても珍しいので……

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まとめ

以上、フィンランドの雪を表す、かわいくておしゃれでたまにちょっとかっこいい単語のリストでした。

ここで紹介した単語も含め、ネーミングに使えそうなかわいい単語を「ネーミングに使えるフィンランド語のかわいい単語集」にまとめてあります。そちらもぜひご覧ください。

雪を表す色々な単語、日本語でも探してみると面白いかもしれませんね。

雪と言えばこんな曲――セリム・パルムグレン『粉雪』

最後に雪と言えばこんな曲。19世紀末から20世紀前半のフィンランドの作曲家セリム・パルムグレンの『粉雪(snow flakes)』という作品です。

雪がきらきらと舞い散るような美しい情景を想像させるパートに始まり、徐々に雪が積もっていき、寒々しさを感じさせるようすを上手く描いている曲だと思います。ぜひご鑑賞あれ。

ちなみに、snow flakesは「雪の結晶」のこと。しかしこの曲の邦題は『粉雪』となっているので、原題とは少し違いますね。ちなみに「雪の結晶」はフィンランド語でlumihiutale(ルミヒウタレ)といいます。

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2件のコメント

  1. てつし

    いつも読ませていただいています。
    雪と一口に言っても色々な言葉があるのですね!フィンランドは雪が多い国だからたくさんあるのだそうですね。日本は雨が多い土地だから雨の言葉が多いですよね。気候と言語の関係が面白いです。
    フィンランド語って響きの綺麗な単語が多いですね!ここに書いてある単語も素敵な響きです。
    vitiやhöyty、詩的で面白いです!
    素敵な記事ありがとうございます。

    • めいげつ

      てつしさんはじめました。素敵なコメントありがとうございます。
      確かにフィンランド語は美しい&かわいい響きの単語が多いですね。字面そのものもけっこう可愛いので、最近日本でもじわじわと浸透してきているように感じます。
      僕のお気に入りはtykkyですね。字面といい単語の表す情景といいフィンランドらしいところが気に入ってます。

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