みなさんは「ビール」と聞いたらどんな飲み物を思い浮かべますか?
お酒なのはもちろんのこと、黄金色に輝く、苦みのある爽やかな飲み物を思い浮かべるのではないでしょうか。この黄金色のビールは、ピルスナー(Pilsner)と呼ばれる種類のもの。現在国内で販売されているビールの多くが、このピルスナーというスタイルなのです。
このピルスナービールは、チェコのプルゼニで生まれたことから命名されました。今回は、このピルスナービールを生んだプルゼニの醸造所、「ピルスナー・ウルケル醸造所」の見学ツアーについてです。
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ピルスナー・ウルケルとは?
現在スーパーなどで見かけるビールの大半を占めるスタイル、ピルスナー。ピルスナー・ウルケルは世界で最初のピルスナービールです。
ピルスナー・ウルケル(Pilsner Urquell)はチェコ西部の都市プルゼニ(Plzeň、ドイツ語名はピルゼンPilsen)にあるピルスナー・ウルケル醸造所(Plzeňský Prazdroj, a. s.)で生まれました。ちなみにチェコ語ではプルゼニュスキー・プラズドロイ(Plzeňský Prazdroj)と呼ばれます。
ピルスナー・ウルケルが誕生したのは1842年。ビールの品質低下に悩んだプルゼニ市の醸造家たちが集まって醸造所を立ち上げた後、ドイツのバイエルンから招聘したブラウマイスター、ヨーゼフ・グロル(Josef Groll)によって作られました。
材料は、プルゼニの地下100m掘って組みだした地下水、チェコのザーツ(ジャテツ)産ホップ、モラヴィア産大麦のモルト。これはピルスナー・ウルケルが生まれた約180年前から変わらないそう。
下面発酵酵母で作られたラガービールで、ホップの苦みと豊かな香り、そして爽やかな舌触りはこうして生まれたのですね。
こちらがピルスナー・ウルケルのロゴ。ビール好きなら一度は目にしたことがあるのではないでしょうか。
ピルスナー・ウルケルは、チェコのパブやビアホールでは必ずと言っていいほど出されています。
チェコに訪れたらぜひ味わいたい、チェコ生まれのピルスナービール。チェコは一人当たりのビールの消費量が世界一の国だと言われのも、このピルスナービールがチェコで生まれたことが関係しているのかも知れません。
ピルスナー・ウルケルの飲み方いろいろ
ピルスナー・ウルケルを出しているビアホール、特に直営のお店に行くと、同じピルスナー・ウルケルでもいくつか違った注ぎ方があることに気づくはず。
ここではピルスナー・ウルケル直営ビアホールで提供されている3種類の楽しみ方(フラディンカ、シュニット、ムリーコ、無濾過)を紹介します。
フラディンカ
フラディンカ(Hladinka)は、ピルスナー・ウルケルの最もオーソドックスな飲み方。500mlの黄金色のビール本体がグラスの6割を占め、その上に分厚い泡の層がどかんと乗っています。
チェコのビアホールでピルスナーを注文すると、ほぼこの注ぎ方で注がれたビールが出されます。もし貴方がビール好きで、チェコで最初にピルスナー・ウルケルを頼むなら、まずはフラディンカが良いでしょう。
シュニット
シュニット(Šnyt)はフラディンカの半分。つまり250mlです。ただしグラスの大きさはそのまま。
あまり大量に飲めない人や、違ったスタイルを楽しみたいけど小さいグラスでビールを飲むなんてプライドが傷つく、なんて方にもぴったり。
もともとドイツ語のschnittから来た言葉なので、ドイツのパブでも場所に寄ってはシュニットを頼むことができるようです。
ムリーコ
ムリーコ(Mlíko)はチェコにおけるビールの注ぎ方でも一番特殊なもの。ビール自体はシュニットと同じ250mlなものの、泡が500mlグラスの9割以上を占めるというとてもエキセントリックな注ぎ方。
チェコ語で「牛乳」と呼ばれるだけあって、非常にまろやかでほのかに牛乳っぽさのある甘い味わいがします。僕はこれにハマって何度かおかわりしてしまいました。
もちろん、時間とともに泡が消えて行って最終的に少量のビールに落ち着くので、実はあまり味わっているヒマはないかも。速めにグイっと飲んでしまいましょう。
ちなみに「ミルコ」と書いているブログも散見されますが、表記を見る限り「ムリーコ」が正解です。
無濾過ビール
以上で挙げた3つは全て注ぎ方の話でした。濾過されたクリアな味わいのピルスナー・ウルケルだけでも違った楽しみ方ができます。
通常のビールを楽しんだ後は、ぜひ無濾過(Nefiltrovaný)のピルスナー・ウルケルを飲んでみて下さい。ピルスナー・ウルケルといえば黄金色の透明なビールですが、無濾過のものは若干オレンジ色が強いのが特徴です。
さっぱりした通常のピルスナー・ウルケルに比べて複雑味があり、ほんのりと甘い。これはなかなか日本では味わえないので、ぜひ現地に赴いて味わってみて下さい。
ピルスナー・ウルケル醸造所見学
いざピルスナービール爆誕の地へ
ピルスナー・ウルケル醸造所は、プルゼニ市街のはずれにあります。旧市街からは歩いて10分ほど。
ピルスナー・ウルケルの生誕50周年を記念して1892年に完成した門。ここが醸造所の入り口です。
門を通り抜けると広い敷地に出ました。右側にある建物はチェコで隻数ナンバーワンのビアホール・Na Spilce、そして左側の建物がビジターセンターです。
ここのロッカーにリュックを置き、受付でチケットを見せたら、ツアーが始まる時間を待ちます。
ツアーが始まると、まずはビジターセンター内で醸造所の歴史を学びます。
こちらが古い醸造所の建物。こちらは主に展示用の施設で、現在は主に新館(見えにくいですがこの建物の裏にあるガラス張りの建物です)で醸造が行われているそう。
こういう風に整備された展示室は、キリンの工場見学を思い出します。館内はやはりホップの香りがほんのり漂っています。
仕込み窯です。このうちいくつかは中を覗くことが出来ます。
このあたりもホップの香りがしました。
醸造所の地下へ。
この後は地下に潜ります。
この醸造所ツアーとは別に「プルゼニの歴史的地下通路ツアー」というツアーもある(こちらも参加しました)のですが、プルゼニ市はチェコの街のなかでも特に地下通路が発達していたそう。
ビールの保存の他、防衛目的でも使われていたようです。
冷蔵庫のない時代にビールの保存に使われていただけあって、地下空間はかなりヒンヤリします。
ここから発酵室へ。
この一列に並んだ樽の中で、ビールの発酵が進んでいます。
樽には蓋がされておらず、空気にじかに触れさせて発酵を促進させているようです。
とある旅系YouTuberがプルゼニの旅動画で言っていましたが、発行しているビールの表面はたしかにクレーム・ブリュレみたいでした。
お待ちかねのテイスティングタイム
見上げるくらいに高く積まれた樽。この奥に行けば、いよいよ待ちに待ったテイスティングです。
樽から直接注がれた、無濾過のピルスナー・ウルケル。ツアーに参加していた子連れの御夫婦と乾杯しました(子供に泡を飲ませてたけど本当に大丈夫か)。
やはり濾過されたものと違って複雑な味わいがあり、ほんのり甘かったです(もちろん濾過ビールも美味しいですよ)。
かつて冷却して使われていた場所。急いで撮ったため手振れが強すぎて申し訳ありません。
エレベーターで地上に浮上します。
こちらがピルスナーを世界で初めて醸造したブラウマイスター、ヨーゼフ・グロルのご尊顔。絵だけど。
今でこそチェコはビール大国として知られていますが、チェコを代表するビールの誕生にはドイツ人醸造師が関わっていたというのは不思議な話です。
地上に上がってすぐのところにギフトショップがあり、お酒やピルスナー・ウルケルのロゴ入りTシャツなどのお土産を購入できます。
僕は前から欲しかったピルスナーウルケルのジョッキを購入しました。ただ、バックパックのスペースが心配だったので、小さめのもの(200ミリリットル)にしました。
それはそうと
醸造所ツアーの終盤でガイドのお兄さんが「プルゼニ市内のパブに馬車でビールを届けている」ということを仰っていました。
「まさかそんな」と思いつつ特に気にも留めてなかったのですが、翌日の午前中にプルゼニ市内を歩いていると、
いました。ピルスナー・ウルケルのロゴがついた馬車。本当に馬車で配ってました。
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おわりに
以上、これでピルスナー・ウルケルの紹介と醸造所ツアー終わり。僕は翌日に地下通路ツアーにも参加したのですが、そちらは別の記事でお話しいたします。
今回滞在したチェコのプルゼニでは、ピルスナー・ウルケル醸造所のほかにも、プルゼニ市外に広がる地下通路の見学ツアーにも参加しました。そのようすもブログに書いています。
プルゼニ観光に便利な、リーズナブルなホテル
今回僕が泊まったのは、旧市街のすぐ外側という好立地にあるホテル・スロヴァン・プルゼニ(Hotel Slovan Plzeň)。高級感のある趣ながら、朝食付きで一泊4,500円程度~(シングルルーム)とお手頃なのが魅力です。レビュー記事は↓からどうぞ。
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